Column 248
2024/01/30 18:00
めまいを起こす疾患には、良性発作性頭位めまい症、メニエール病、前庭神経炎、突発性難聴、加齢性平衡障害、持続性知覚性姿勢誘発めまい等々、多くのものがあります。これらの中で、最も頻度が高いのが良性発作性頭位めまい症(BPPV)です。
耳は、外耳、中耳、内耳の3つの部分からできています。外字から中耳までは音を振動で伝える器官で、内耳は音を脳へ伝えるとともに身体の平衡(バランス)を保つ働きもしています。内耳には音を感じとる蝸牛と平衡器官である前庭と三半規管があり、前庭にはカルシウム塊である耳石が収まる耳石器があります1)。
耳石器は。垂直方向の加速度を検出したり、水平方向の加速度を検出したりすることによって、視覚情報の安定や姿勢の保持が可能になっています。この耳石器の中に収まっている耳石が、カルシウム代謝の変動などによって脆弱化、崩壊、剥脱することによって、三半規管の中に迷入した場合にめまいが起こります2)。
カルシウム塊である耳石が脆弱化、崩壊、剥脱するカルシウム代謝の変動は、全身の骨組織では骨量減少症、骨粗鬆症を引き起こします。BPPVは、回転性めまいの原因としては最も頻度が高く、頭を動かす度に生じ、安静にて数十秒以内に消失します。50歳から60歳代の女性に多く、そのうち多くの女性に骨量減少症、骨粗鬆症が認められます3)。
BPPVの治療で大切なことは、不安を伴なう非常に辛い症状であるため、患者を安心させることが重要です。対症療法としては抗めまい薬が有効ですが、根本治療は耳石器より剥脱して三半規管内に迷入した耳石を三半規管の外にある耳石器に戻す理学療法になります3)。
内耳の迷入した耳石をゆっくり、ゆっくり戻していくために、横になって右下で10秒、仰向けで10秒、左下で10秒、という動作を繰り返します。フワフワと舞い上がった雲母のような耳石がゆっくり、ゆっくりと元の自石器の場所に戻って来ればめまいはなくなります。
ヒッチコックの「めまい」という題名の映画では、高所恐怖症によるめまいで警察を辞めた刑事が出てきます。これはBPPVではないと思われますが、皆さんはどう思われますか。
引用
1)https://www.fureaikanpou.com/post/2019/08/10/
2)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jser/71/1/71_1_33/_pdf
3)今日の治療指針2020:耳鼻咽喉科疾患1597〜1598
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