Column 229
2023/09/19 18:00
9月は和風月名では「長月(ながつき)」と呼ばれます1)。まだまだ、残暑は厳しいものの、空は少しずつ高くなり、日暮れとともに虫が鳴き、秋の気配がそこはかとなく感じる月です。23日には秋分の日を迎え、24日は中秋の名月、十五夜。月が美しく輝く時節です。
9月を何故、「長い月」というのか、その由来には諸説ありますが、「長月」とは「夜長月(よながつき)」を略したものと考える説が有力なようです。新暦の現在でも、秋分以降になれば次第に日が短くなり、夜が長くなって「長月」を実感します。この他に長月の異名として、菊月、菊間月、詠月、季月などがあります。
秋分の日と春分の日には、昼と夜との時間が同じ長さになります。秋分と春分の日は「彼岸の中日」といって、前後3日ずつをお彼岸といい「彼岸会(ひがんえ)」とも呼ばれます。先祖の御霊を供養するためのお彼岸で、彼岸花(曼珠沙華(まんじゅしゃげ))が赤く燃えるように咲く季節です。
春は花、秋は月に代表されるように、十五夜を名月と呼び、月見の習慣があるのは、風雅の行事というよりは農耕の行事でもともと収穫を祝う習わしであったようです。さらに、月を拝む習慣には仏の来迎といった仏教的な意味もあって、月見の習慣のもとになったと言われています。
中秋の名月の頃に開花するため、「十五夜草(じゅうごやそう)」と呼ばれる花があります。その花「紫苑(しおん)」は、50cmから2mほどにも丈を伸ばす草花で、紫色の花びらが可憐な小さな花をたくさんつけ、平安時代から薬用や観賞用に親しまれてきました2)。
紫苑は風情ある秋の草として、萩、吾亦紅(われもこう)、りんどう、菊などと共に徒然草にも挙げられ、今昔物語では「思い草」とも呼ばれています。
「紫苑咲くわが心より上りたる煙の如きうすいろをして」与謝野晶子
長月が終わるころには、爽やかな空気に季節の深まりが感じられ、もののあはれを詠いたくなるのが日本人ではないでしょうか。
引用
1)https://tenki.jp/suppl/yasukogoto/2018/09/01/28406.html
2)https://minhana.net/wiki/シオン/
3)http://www5c.biglobe.ne.jp/~n32e131/tanka/akiko1601.html
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