Column 243
2023/12/26 18:00
山には四季それぞれに特別な言葉があります。春は「山笑う」、夏は「山滴る(したたる)」、秋は「山粧う(よそおう)」、そして、冬は「山眠る」です。
これらの言葉は俳句の季語として使われます。「山笑う」とは、春になって山の草木が一斉に芽吹き始め、動物たちも動き出して賑やかに華やかになった山の様子を表した言葉です。由来は、中国北宋の画家郭熙(かくき)の漢詩である山水訓の「春山淡冶にして笑ふが如く」だそうです1)。
正岡子規も「故郷やどちらを見ても山笑ふ」という句を読んでいます。春が訪れた明るい山の風景と、子規の故郷である松山への思い入れが感じられます。
夏の「山滴る」、秋の「山粧う」、冬の「山眠る」も郭熙の漢詩「山水訓」を引用したもので、以下のような使われ方をします。
夏の「山滴る」は、山水訓の「夏山は蒼翠にして滴るが如し」が由来で、夏の山が草木の葉で覆われて緑が滴るように見えることにたとえた言葉です。春に笑い出した山の緑が力強く繁り、強烈な陽の光が深緑の葉や葉先から滴る水滴に反射してまばゆく光っている様がうかばれます。
秋の「山粧う」は、山水訓の「秋山は明浄にして粧ふが如く」が由来で、秋の山が紅葉で色づいた様子を指す秋の季語として使われます。京都の紅葉は海外からの旅行者に圧倒的な感動を与えるようです2)。赤や黄に色づく紅葉を見ることができるのは落葉樹だけで、特に日本には落葉広葉樹の種類が多いので紅葉の見どころが多いというわけです。
冬の「山眠る」は、山水訓の「冬山は惨淡として眠るが如し」が由来で、冬の山の静まり返った様子を指すことから、冬の季語として使われています。深々と降り積もった雪が山に雪化粧を施して山は眠ったように静まり返ります。雪が降ると静かに感じるのは雪の結晶が音を吸収して空気の振動を抑えるからなのです3)。
山には神様がいると日本人は信じてきました。四季折々に山の神様が笑ったり、お化粧したり、眠ったりしていると思えば、何だか親しみがわきますね。
引用
1)https://halmek.co.jp/qa/1575
2)https://caede-kyoto.com/日本人の目から見ても美しい京都の紅葉%E3%80%82海外の/
3)https://ex-arc.com/461.html
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