Column 238
2023/11/21 18:00
Fitz-Hugh-Curtis症候群(フィッツ・ヒュー・カーティス症候群)って聞いたことありますか1)。この疾患は、若い女性に多く、強い上腹部痛とくに右季肋部痛(肝臓の周囲付近の痛み)を訴えることが特徴的な疾患です。微熱があることもありますが、肝障害もなく診断に苦慮することもあります。
胃腸炎などの消化器症状と間違われて、胃腸薬などが投与されることもよくあります。この病気は、元来婦人科疾患であり、原因はクラミジアや淋菌などによる骨盤内腹膜炎が上腹部まで広がって肝臓周囲で炎症を起こし、横隔膜と肝臓の間に繊維状の癒着を起こすことが病態です。
Fitz-Hugh-Curtis症候群を腹腔鏡で観察すると、肝臓の表面と横隔膜との間にバイオリンの弦のような白い繊維状の癒着が見られます。この繊維状の癒着は完成してしまうと非常に硬く、抗生剤投与で溶けることがないため、腹腔鏡手術の際に外科的に切除することもあります。
コラム「クラミジア感染症」でも紹介したように、女性のクラミジア感染症は自覚症状に乏しくおりものの増加や不正出血などがありますが、下腹部痛がある場合には上腹部痛や右季肋部痛の有無もしっかりと確認しておく必要があります。
最近ではFitz-Hugh-Curtis症候群の原因菌はクラミジア・トラコマティスが多いのですが、淋病の原因菌である淋菌も依然として考えておかなければならないため、おりものの異常や腹痛を訴えて受診する若い女性の場合には、コラム188「性病検査」にもあるように様々な検査を組み合わせて行うことも重要です。
性病の心配や疑いがある場合には、Fitz-Hugh-Curtis症候群まで症状が進まないうちに早期の性病検査をお勧めします。当クリニックでは性病検査希望の方には、腟分泌物の「淋菌」「トリコモナス」、子宮頸管粘液の「クラミジア」、血液検査で「梅毒」「HIV」を組み合わせて行なっています。
引用
1)https://hokushin.jcho.go.jp/iryounogennba201210/
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