Column 213
2023/05/30 18:00
レストランでコース料理の最後に出てくるデザートは楽しみの一つですが、その食事の後に出るデザートの由来について、フランス料理研究家の大森由紀子さんが興味深い記事を書かれています1)。
17世紀末、フランスの豪華絢爛なベルサイユ宮殿には、1000人以上の貴族や使用人が住んでいたそうです。その中で王様の食事に関わっていたのは、なんと400人! そして宮殿では、晩餐会が頻回に繰り広げられていました。
その晩餐会では、数種類の異なる料理が盛られた大皿が5回ほど入れ替わり、着席を許されるのは王様の招待者のみです。その他の貴族たちは周囲に立ったまま、食事の様子を見ているのが習わしでした。
一晩で30種類もの料理が出されたのですから、当然のように余ります。それを当時「デザート」と呼びました。フランス語の「desservir(食卓を片付ける)」という動詞から派生した言葉でした。
デザート、つまり余った料理は配膳部の官僚に配られ、それでもさばききれなければ商人の手に渡ります。二束三文で手に入れた高級料理を商人たちは温め直し、腐りかけたものにはソースをかけて、大通りで通行人たちに売りさばいていました。
一方で、現代の「食後のデザート」に当たる言葉は「フリュイ」、つまりフルーツでした。当時は、フルーツやシャーベットなどが食後にふるまわれていたことに由来します。フルーツだけでなく、甘いお菓子が食後のデザートとして確立したのは、19世紀後半になってからだといわれています。
実は、私はデザートが英語だろうと思っていたのですが、このような由来があったとは驚きです。
日本語で「デザート」と書くと、2つの英語に訳されて混乱することがあります。「デ」にアクセントがあれば、砂漠・荒野という英語のdesertになります。「ザー」にアクセントがあれば、食後のデザートという英語のdessertになります。食後のデザートは1つでは満足できないから、「s」が2つと覚えると良いかもしれませんね。
引用
1)https://www.sankei.com/article/20230301-QGFSSDSFKBJYXFD6D2562TBYD4/
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