Column 211
2023/05/16 18:00
「ラーゲリより愛を込めて」という映画1)を観ました。
ラーゲリというのは、第二次世界大戦でソビエト連邦(ソ連)軍の捕虜となった日本人が強制連行されて過酷な労働をさせられた劣悪な環境のシベリア強制収容所のことです。「シベリア抑留」の現場がラーゲリです。
日本とソ連の間には、日ソ不可侵条約という平和条約が結ばれていましたが、1945年8月8日、終戦の1週間前にソ連はこの条約を一方的に破って満州に侵攻してきました。これは、武装解除した日本兵の家庭への復帰を保証したポツダム宣言に反する行為でした2)。
シベリア抑留では、投降した日本軍捕虜や民間人らが長期にわたる抑留生活と強制労働により多くの死者も出ました。ソ連によって抑留された日本人は約57万人5千人に上り、厳寒の環境下で過酷な労働を強要されたことにより、約5万8千人が死亡しています2)。
シベリア抑留は、日本とソ連の国交が回復した1956年の集団帰国によって終了しましたが、ソ連崩壊後まで帰国が許されなかった民間人もおり、ソ連政府は日本政府による安否確認や帰国の意向調査を妨害し続けました。ソ連崩壊後の1993年、日本を訪れたロシアのエリツィン大統領は「非人道的な行為だった」ことをようやく認めて謝罪の意を表しました。
映画では、満州鉄道の職員だった山本幡男一等兵(主演:二宮和也)が捕虜としてラーゲリに抑留されて、妻(北川景子)や幼い4人の子供達と離れ離れになったまま消息もつかめない中、愛する家族への想いが綴られています。同時に捕虜となった軍曹(桐谷健太)、漁師(中島健人)や満鉄の上司(安田顕)らが力を合わせて主人公の想いを届けようとしました。
この映画は辺見じゅんによるノンフィクションが原作です。私の妻の父も満州鉄道の職員でしたが、映画の主人公と同じようにラーゲリに抑留された経験の持ち主でした。マンドリンが弾けたので、バラライカの好きなソ連兵からはあまりいじめられなかったようで、1950年頃に帰国しています。
引用
1)https://lageri-movie.jp
2)https://ja.wikipedia.org/wiki/シベリア抑留
©️ Nozaki Women's Clinic Allrights Reserved.
Designed by HARUNO design.