Column 210
2023/05/09 18:00
先日、アクロス福岡シンフォニーホールでの「海道東征」というコンサートに行ってきました。
海道東征とは、北原白秋作詞、信時 潔作曲による交声曲(カンタータ)です。1940年に皇紀2600年を祝賀する奉祝曲として発表されましたが、戦後封印されて永い期間演奏されることはありませんでした。戦後70年、信時没後50年を迎えた2014年2月11日、建国記念の日に演奏が各地で再開されるようになりました1)。
北原白秋は、古事記や日本書紀の記述をもとにして、国産みの神話から神武東征までを作詞し、海道東征と名付けました。作曲は「海ゆかば」の作曲で知られる日本洋楽の礎を作った信時 潔で、独唱と合唱、管弦楽による50分におよぶ大曲です。
雅楽の響きがオーケストラで荘重に始まり、バリトンとテノールのソロで交声曲が始まります。合唱が日向の国の高千穂の土地柄の良さをたたえて歌う中、天照大御神(あまてらすおおみかみ)の子孫であるカムヤマトイハレビコ(後の神武天皇)は「わが国を統治するには東に向かわねばならぬ」と決意します。
海道東征は全8章の楽節から成ります2)。第一章「高千穂」第二章「大和思慕」第三章「御船出(みふなで)」第四章「御船謡(みふなうた)」第五章「速吸と菟狭(はやすいとうさ)」第六章「海道回顧」第七章「白肩の津上陸」第八章「天業恢弘(てんぎょうかいこう)」
日向の美々津港から船出した一行は、速吸(豊予海峡)を通って菟狭(宇佐)に立ち寄り、筑紫の国(北九州市岡田宮)に1年、安芸の国(広島県厳島神社)に7年、吉備の国(岡山市高島神社)に8年滞在しながら、ゆっくりと東を目指します。
河内国の白肩の津に上陸した一行は、長髄彦(ナガスネヒコ)の軍勢と戦いますが、その後は和歌山県の熊野から奈良県に入り、橿原神宮(奈良市橿原)でカムヤマトイハレビコは神武天皇として即位します。
古事記や日本書紀に出てくる地名や人名が、実際に神社や遺跡、人々の伝承に残されていることがよく分かります。天孫降臨は神話だとしても、日向市美々津港から海岸伝いに東へ向けて出発した一行がいたことは事実だったように思われます。日本の成り立ち、古代史に思いをはせたコンサートでした。
引用
1)https://ja.wikipedia.org/wiki/海道東征
2)海道東征コンサートアクロス福岡シンフォニーホールパンフレット
©️ Nozaki Women's Clinic Allrights Reserved.
Designed by HARUNO design.