Column 200
2023/02/28 18:00
最近、不妊治療ではAMHというホルモンの値がよく話題に上ります。AMHとはアンチ・ミューラリアン・ホルモンの略で、発育過程にある卵胞から分泌されるホルモンです1)。血中のAMH値は原始卵胞(休眠している卵胞)から発育する卵胞の数を反映すると考えられています。
男性の場合、精子は睾丸で作られていますので、いつも精子は新しく、何歳になっても精子は作られ、年齢の影響をほとんど受けません。一方で、女性の場合、卵巣の中では新しい卵子は作られておらず、その人が生まれる前に作られた卵子が保存されているだけで、加齢とともに卵巣では卵子の数は減っていきます。
AMHの値を測定することで、卵巣の中にどれくらい卵の数が残っているか、つまり卵巣の予備能がどれくらいあるのかを知ることが出来ます。しかし、AMHの数値はあくまでも卵子の在庫の目安であり、卵子の質を表すものではありません。
AMH値が高いと妊娠しやすく、AMH値が低いと妊娠しにくくなると思われがちですが、同じAMHの数値であっても、年齢が高い人の方が妊娠する割合は低くなります。卵子の老化は実年齢に比例しているからです。実は、AMHの数値がほとんどゼロに近い場合でも、自然に妊娠・出産している人はたくさんいます。受精卵さえできれば、その人の年齢なりの妊娠率はきちんと出ます。重要なのは、妊娠・出産を計画するまでの間に、卵巣に受精可能な質の良い卵子が残っているかどうかなのです。
しかしながら、卵巣の中の卵子の質を調べることは難しいため、最近では卵子の在庫数を表わすAMH値が一つの指標として利用されています。また、AMHは他のホルモン検査と違い月経周期による影響が小さいとされており、いつ測ってもよい検査ですので気軽に受けられるという利点もあります。
福岡市では、2021年7月からプレコンセプションケア推進事業2)に取り組んでいます。「プレコンセプションケア」とは、コンセプション(妊娠)の計画の有無に関わらず、早い段階から妊娠・出産の知識を持ち、自分の身体への健康意識を高めることです。WHOが推奨し国でもその考え方を進めています。
福岡市では、この「プレコンセプションケア」を推進する取り組みの一つとして、30歳になる女性を対象に健康や将来の生活を考えるきっかけ作りとなるように、医療機関でのAMHの測定と医師からの助言にかかる費用への助成をしています。
対象者は、福岡市内に住民票があり、当該年度中に30歳になる女性です。その方々にはクーポン券が送付されますので、指定の医療機関でAMH値を調べて医師からの説明やアドバイスを受けることが出来ます。自己負担額は500円で、当院でもこの検査を行なっています。
30歳になった方は、自分のAMHの値がどれくらいなのかを知っておいてはいかがでしょうか。詳しくは、福岡市公式HP内の、福岡市プレコンセプションケア推進事業のご案内をご参照ください2)。
引用
1)https://ivf-asada.jp/amh/amh.html
2)https://www.city.fukuoka.lg.jp/kodomo-mirai/k-kikaku/health/preconceptioncare.html
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