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Column 177

2022/09/20 18:00

吹上浜

院長コラム

 母の実家は鹿児島県南さつま市で産婦人科医院を開業していました。この産婦人科医院から西へ数キロ行ったところへ広がるのが吹上浜です1)。東シナ海に面した吹上浜は長さ47kmの砂丘で日本一の長さがあり、日本三大砂丘と呼ばれているほか、日本の渚百選にも選定されている美しい海岸です。

 砂浜は白く、長さ何キロにも及ぶ防風林が延々と続いており、まさに白砂青松という言葉がピッタリです。南の方には吹上浜海浜公園があり、1987年からほぼ毎年吹上浜砂の祭典が開催され、砂と水で固めた砂山を削って造る砂像彫刻が有名です。

 子供の頃、夏休みには私も吹上浜によく貝掘りに行きました。アサリのような小さな貝ではなく、海の中に入り足の指をつかって大きなハマグリを採るのです。吹上浜の海岸は水深が急に深くなる地形なので、海水浴禁止になっているところも多いのですが、60年前の吹上浜、それはのんびりしたものでした。

 吹上浜からの帰りは、防風林を通り抜けてくるのですが、この防風林は昼なお暗く、地元の人に案内をしてもらわなければ道に迷うほどでした。私の祖父母からも、防風林で迷子になったり、人さらいに遭ったりするから、注意するようにと何度も言われたことをよく思い出します。

この吹上浜の海岸に夕日を見に来た市川修一さん(当時23歳)と増元るみ子さん(当時24歳)が北朝鮮の工作員に拉致されたのが、1978年8月12日のことです2)。直前に立ち寄ったさつま湖畔で撮影した写真が残されています。

1978年8月、私は九大医学部6年生で当時24歳でした。

 今思えば、私と同じ年齢の人たちが、地元のレジャースポットである吹上浜から拉致されたことに驚きを隠せないと同時に、一歩間違えば私も、、、という気持ちに背筋が凍る思いです。吹上浜から西へ800km行けば上海市です。それよりも遥か遠い北朝鮮からの工作員が日常的に来ていたとは当時の日本人は知る由もないことでした。

引用

1)https://ja.wikipedia.org/wiki/吹上浜
2)https://www.nishinippon.co.jp/item/n/534129/

この記事を書いた人

野崎 雅裕
野崎 雅裕野崎ウイメンズクリニック 院長
福岡市天神の産婦人科、野崎ウイメンズクリニックの院長。女性医学の専門医として、九州大学病院などにおいて、思春期から更年期女性のホルモン療法や不妊治療、漢方療法、月経痛や女性のこころとからだの悩みに関する医療に長年従事。ホルモン療法やピルの使い方、月経痛の対処法や月経移動の説明にも精通した熟練スタッフとともに、すべての患者様へあたたかいケアを行っている。
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