Column 122
2022/01/16 06:00
2013年5月、米国のTime誌に米国のハリウッド女優、アンジェリーナ・ジョリーさんが両側乳房切除術と両側卵巣卵管摘出術を施行したという記事が掲載されて、この衝撃的なニュースは世界中を駆け巡りました。
彼女は、遺伝的に乳がんになりやすい遺伝子変異をもっていたために、このような手術を行ったのです。
アンジェリーナジョリーさんは、家族に乳がんや卵巣がんに罹患したひとが複数いたために、遺伝子検査を受けています。その結果、乳がん及び卵巣がんに罹患しやすいBRCA1遺伝子変異を有していたことが分かり、リスク低減両側乳房切除術と、リスク低減両側卵巣卵管摘出術を受けたのです1)。
遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)はBRCA1またはBRCA2遺伝子の病的変異が原因で乳がんや卵巣がんを高いリスクで発症する遺伝性腫瘍の一つです。
HBOCの特徴としては、乳がんの若年発症、濃厚な家族歴、両側発症、またホルモン剤や分子標的治療薬が効きにくいタイプ(トリプルネガティブ乳がん)が多いこと、また卵巣がんにおいても濃厚な家族歴を有することが多いといった特徴が挙げられます1)。
今回のアンジェリーナ・ジョリーさんの選択が正しいかどうかは、倫理的側面も踏まえて考えなければならないことが多々ありますが、少なくとも遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)という疾患を認識して、濃厚な家族歴を有する場合には専門外来を受診されることが大切です。
今後、必要な時には、遺伝子検査を受けることが、人生設計を考えるうえで非常に重要になります。わが国では2015年よりHBOC登録事業が始まり、2018年より日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構(JOHBOC)にてHBOC全国登録事業が開始されています2)。
アンジェリーナ・ジョリーさんの勇気ある行動が、世界中のHBOC患者と医療者に衝撃を与えて、HBOC診療が大きく動き始めました。
引用
1)http://www.naha-nishi-clinic.or.jp/announce/essay/034/index.html
2)https://johboc.jp/kakeitoroku/
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