ナンタケットバスケット

院長コラム

　ジャクリーヌ・ケネディが愛用していたという逸話がある「ナンタケット・バスケット」をご存じでしょうか。カジュアルはもちろん正装が求められるオフィシャルな場面にも似合う懐の深い蓋付きのバスケットです１）。

　海外のセレブリティが愛するナンタケットバスケットは、アメリカ北東部ニューイングランドのマサチューセッツ州ケープコッドの南に浮かぶ小さな島、ナンタケット島で生まれました。ナンタケット島はかつて世界有数の捕鯨船の基地でした２）。白鯨を著したメルヴィルは、海の3分の2はナンタケットのものであるとまで書いています3）。

　ナンタケット島を出港した捕鯨船は、大西洋を一路南下し続けます。パナマ運河などなかった時代ですから、捕鯨船はアルゼンチン沖を南下して、マゼラン海峡を通り太平洋に出ます。太平洋に出た捕鯨船はクジラを求めて何日も何日も捕鯨を続けます。捕鯨のないときには、乗組員たちは鯨のアブラを貯める樽作りに励みます。フィリピンに寄港した際に籐のかご作りが捕鯨船に伝わったのがナンタケットバスケットの始まりだと言われています4）。　

　ナンタケットスレイライドという曲があります。アメリカのハードロックバンドマウンテンが1971年に発表した曲です。ゆったりとしたリズムのメロディーが流れるハードロックとはほど遠い穏やかな曲です。副題に“オーウェン・コフィンに捧ぐ”とあります。オーウェン・コフィンは19世紀にクジラと衝突して沈没した捕鯨船エセックス号の少年船員で、仲間を助けるために自ら犠牲となったのです。

現在では、大西洋に浮かぶ風光明媚な別荘地としてアメリカやヨーロッパからのセレブリティが避暑や観光に訪れるナンタケット島。ナンタケットバスケットは捕鯨船で生まれて、人びとの生活に定着して、永く愛される芸術品になりました。オーウェン・コフィンも穏やかな海路では籐のかごを編んでいたのでしょうか。

引用
１）https://bit.ly/3v19grX
２）https://ja.wikipedia.org/wiki/ナンタケット
３）https://ja.wikipedia.org/wiki/白鯨
４）https://www.toukagu.com/SHOP/KIB-004.html

この記事を書いた人

野崎雅裕野崎ウイメンズクリニック院長: 福岡市天神の産婦人科、野崎ウイメンズクリニックの院長。女性医学の専門医として、九州大学病院などにおいて、思春期から更年期女性のホルモン療法や不妊治療、漢方療法、月経痛や女性のこころとからだの悩みに関する医療に長年従事。ホルモン療法やピルの使い方、月経痛の対処法や月経移動の説明にも精通した熟練スタッフとともに、すべての患者様へあたたかいケアを行っている。

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