Column 226
2023/08/29 18:00
「クーリエ」とは「情報の運び屋」の意味です。映画「クーリエ:最高機密の運び屋」は2020年のイギリスのスパイ・スリラー映画で、1960年のキューバ危機において重要な役割を果たしたとされる実在のイギリスのスパイで電気技師、グレヴィル・ウィンの半生が描かれています1)。
1960年、東西冷戦により世界中が核の脅威に晒される中、モスクワのアメリカ大使館にソ連高官からの密書が届けられます。ソ連のペンコフスキー大佐がアメリカへの亡命を打診して来たのです。CIAとMI6は、怪しまれずに活動する素人を起用することを計画し、英国人ビジネスマンのウィンを説得します。
CIAとMI6にスカウトされたウィンは恐る恐るモスクワへ向かいます。商用を装いモスクワを訪れるウィンの協力でペンコフスキーは2年にわたり情報を送り続けます。そこで、英国とアメリカは、ソ連がキューバにアメリカを射程圏内とする核ミサイルの配置を計画していることをつかみます。
1962年、ケネディ大統領は全世界に向けて、キューバ国内のソ連核ミサイルの存在と応戦する意志を明らかにしました(キューバ危機)。アメリカ内部のソ連スパイによってペンコフスキーは逮捕され、ウィンも志願してソ連に向かいましたが、同時に逮捕されます。
ソ連の収容所に拘禁されたウィンは、スパイの鉄則として無罪を主張し耐え続けます。そのウィンに面会に来た妻から、キューバの核ミサイルが撤去された事実を知らされます。一度だけ対面したペンコフスキーにウィンは「世界を救ってくれた」と告げますが、ペンコフスキーはその後処刑されました。
一年半に及ぶ拘束の末にウィンは解放され、イギリスでビジネスマンとして生涯を終えました。ウィン役を好演したのはイギリスの怪優ベネディクト・カンバーバッチです。カンバーバッチは、後半のシーンの撮影のために3ヶ月間で10kgも体重を減らし、丸刈りにするシーンも実際に自分の髪を刈って撮影しました。
スパイ天国と呼ばれる日本ですが、海外ではこのようなクーリエといわれる人間が実在し世界を動かしているのです。
©️ Nozaki Women's Clinic Allrights Reserved.
Designed by HARUNO design.