Column 224
2023/08/15 18:00
2023年4月、経口中絶薬「メフィーゴパック」が承認されました1)。この薬はミフェプリストンとミソプロストールという2種類の薬剤を使用するもので、「子宮内妊娠」が確認された妊娠63日(妊娠9週0日)までの女性に対する人工妊娠中絶を目的としています。
ミフェプリストンは妊娠を継続するために必要なホルモンであるプロゲステロンを遮断する薬です。また、ミソプロストールは子宮筋を収縮させて子宮内容を排出させる薬です。この2種類の薬を服用して子宮内容を安全にかつ完全に排出させるためには正しい使用法を守らなければなりません。
正しい用法・用量は、ミフェプリストン1錠(200mg)を経口服用し、その36〜48時間後に、ミソプロストール4錠(800μg)を左右の臼歯と頬の間に2錠ずつ30分間静置します。口腔内にミソプロストールの錠剤が残った場合には飲み込みます。
国内の臨床試験では、ミソプロストール投与後24時間までに人工妊娠中絶が成功した被験者の割合は93%でした。そのため、人工妊娠中絶が達成されなかった場合には従来の外科的処置が必要とされることもあります。また、子宮内膜炎等の感染症が起こることもありますので注意が必要です。
ミソプロストール投与後は胎嚢が排出されるまで入院または院内待機が必須とされます。国内臨床試験での主な副作用は、下腹部痛(30%)嘔吐(20%)でしたが、重大な副作用として、重度の子宮出血(0.8%)や感染症(頻度不明)が報告されています。
ミフェプリストン(RU-486)は1980年に開発され、フランスでは1987年から、米国では2000年から中絶薬として使用されています。私も1985年頃、大学院時代にRU-486をスイスのロシュ社から購入して、卵管運動においてプロゲステロンを遮断する動物実験をした経験があります。
メフィーゴパックは登録された指定医師の下で使用できる薬剤であり、必ず指定医師の指示に従って投与を受ける必要があります。この製剤は米国においても規制の範囲内で、医療従事者の管理下での使用が求められており、米国政府の規制の及ばないインターネットや個人輸入により入手することのないよう注意喚起を行なっています。
現在、日本では入院施設のある医療機関でのみ使用可能となっています。
引用
1)https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/kojinyunyu/050609-1c.html
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