Column 194
2023/01/17 18:00
コラム16「12月10日は何の日?」でお話ししたように、12月10日はノーベル賞の授賞式がある日です。2022年のノーベル生理学・医学賞の受賞者に、スウェーデン出身でドイツのマックスプランク研究所のスバンテ・ペーボ博士が選ばれました1)。博士は2020年から沖縄科学技術大学院大学の客員教授も務めています。
ペーボ博士は、4万年前に絶滅したネアンデルタール人の遺伝情報を解析する技術を世界で初めて確立し、古代人の骨に残っていた遺伝情報(DNAの断片)を抽出して詳しく調べ、現代の人類であるホモ・サピエンスと比較しました。
その結果、現代の人類であるホモ・サピエンスはネアンデルタール人の遺伝情報の一部を受け継いでいることを突き止め、ホモ・サピエンスとネアンデルタール人は種が交わっている(交雑している)可能性を明らかにしました。
さらに、ネアンデルタール人の遺伝情報は、現代の人類が標高の高い土地での生存を可能にしたり、ウイルスに対する免疫反応の仕方に影響を及ぼしていたり、現代の私たちの身体の仕組みをより深く理解するのにつながっています。
ペーボ博士の研究チームは、新型コロナウイルス感染症の患者3000人以上を対象に分析した結果、重症化リスクを増加させる遺伝子はネアンデルタール人から引き継がれたもので、この遺伝子を持つ人では重症化リスクが倍増することを、2020年9月ネイチャー誌に発表しました。
また、新型コロナウイルスに感染して重症化した患者2200人余りを対象に分析して、ネアンデルタール人から引き継がれた別の遺伝子を持つ人では、逆に重症化が22%抑えられることも、2021年2月にアメリカ科学アカデミー紀要に発表しました。
ペーボ博士は、「4万年に絶滅したネアンデルタール人の免疫システムが、現代の私たちにとって、良い意味でも悪い意味でも影響を与えているのは驚くべきことです。」と述べています。
ペーボ博士の父親も1982年にノーベル生理学・医学賞を受賞しています。ノーベル賞のDNAは脈々と受け継がれています。
引用
1)https://www3.nhk.or.jp/news/special/nobelprize/2022/medicine/article_18.html
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