レチノール

院長コラム

最近、レチノール配合のアンチエイジング化粧品が市販されるようになりました。レチノールはビタミンAの一種です。ビタミンAは、レチノール、レチナール、レチノイン酸の総称で、肌に強く作用するビタミンとして知られています１）。近年の研究により、レチノールは肌の細胞に働きかけ、シワやシミへの改善効果があることが明らかになってきました２）。

　レチノールは、加齢による肌の自然老化だけではなく、紫外線によるシワやたるみなどの光老化にも改善効果があります。それは、皮膚の表皮細胞のターンオーバーを促進して、常に新しい細胞が表面に現れるからです。さらに、肌の潤いを保つヒアルロン酸の合成を促進して、加齢により薄くなる表皮を厚くします。

　レチノールは、肌の弾力を保つ真皮コラーゲンやエラスチンの生成も促進して、深いシワが刻み込まれた肌にハリや弾力を与えます。このように、皮膚を紫外線などから守ってくれるレチノールですが、レチノール自身は光や酸化の影響を受けやすい不安定な物質です。

　そのため、レチノール配合の化粧品は従来製造が難しかったのですが、外気に触れにくいパッケージの開発や製造技術の進化によって市場に出るようになりました。レチノールは、皮膚科で処方されるレチノイン酸と比べて、刺激性が高くないため、赤みやヒリヒリ感などが起きにくい成分です。

　レチノール配合製品を初めて使用する場合には、少しずつ皮膚をレチノールに慣らしていくのが大切です。使い始めは軽いピリピリとした刺激を感じることもありますが、1日おきに使用するなどして徐々に皮膚を慣らしていくのが良い方法です。

　また、レチノールは乾燥や紫外線に弱いため、保湿剤の使用や日焼け止めを併用するのが大切です。ところで、レチノールを含むビタミンAは摂りすぎるとかえって身体に悪いことも知られています。通常の食事ではビタミンA過剰症は起きませんが、ビタミンAサプリメントなどは多く摂取しないように注意が必要です。

引用
１）https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/vitamin-a.html
２）https://www.laroche-posay.jp/doctors-contents/takahashi01.html

この記事を書いた人

野崎雅裕野崎ウイメンズクリニック院長: 福岡市天神の産婦人科、野崎ウイメンズクリニックの院長。女性医学の専門医として、九州大学病院などにおいて、思春期から更年期女性のホルモン療法や不妊治療、漢方療法、月経痛や女性のこころとからだの悩みに関する医療に長年従事。ホルモン療法やピルの使い方、月経痛の対処法や月経移動の説明にも精通した熟練スタッフとともに、すべての患者様へあたたかいケアを行っている。

レチノール

この記事を書いた人

最新の投稿