Column 89
2021/09/22 19:00
前回のコラム88で、ひどい月経痛=月経困難症のお話をしました。月経困難症を起こす病気の代表が子宮内膜症です。子宮内膜症とは、「子宮内膜あるいはそれに似た組織が子宮の内側以外の場所で発生し発育する疾患で、20~30代の女性で発症することが多いといわれています1)。」
子宮内膜症とは 子宮内膜またはそれに似た組織が何らかの原因で、本来あるべき子宮の内側以外の場所で発生し発育する疾患が子宮内膜症です。20~30代の女性で発症することが多く、そのピークは30~34歳にあるといわれています。
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子宮内膜症は女性ホルモンの作用で増殖し、月経血が溜まったり、周囲の組織と癒着を起こして、さまざまな痛みをもたらし、不妊症の原因にもなります。子宮内膜症ができやすい場所として、卵巣、ダグラス窩(子宮と直腸の間のくぼみ)、仙骨子宮靭帯(子宮を後ろから支える靱帯)、卵管や膀胱子宮窩(子宮と膀胱の間のくぼみ)などがあげられます。稀ですが肺や腸にもできることがあります1)。
症状の代表的なものは「痛みと「不妊」です。痛みの中でも月経痛は子宮内膜症の患者さんの約90%にみられます。この他、月経時以外にも腰痛や下腹痛、排便痛、性交痛などがみられます。こうした症状は20~30歳代の女性に多く発症し、加齢による女性ホルモンの減少を境におさまります。また、妊娠を希望する生殖年齢の女性では「不妊」が問題となります。妊娠の希望がある子宮内膜症患者さんの約30%に不妊があると考えられています1)。
治療としては、痛みに対してはまず、鎮痛剤を使用します。効果が得られないときはホルモン量の少ないピル(低用量ピル)を用います。視床下部ホルモンであるGnRHの拮抗薬や黄体ホルモン剤などが用いられることもあり、女性ホルモンの分泌を抑えたり直接病巣に作用させたりして症状を緩和させます。
卵巣にチョコレートのう胞などの病巣がはっきりしている場合は、手術を考慮します。妊娠を望んでいる場合は、病巣部のみを切除して子宮や卵巣の正常部分を残す手術を選択します。妊娠を望まない場合には、病巣のみの摘出に加えて、子宮、卵巣などを調べたり摘出することもあります1)。
子宮内膜症は、どの治療法を選択しても将来的に再発する頻度が高いことや、卵巣の子宮内膜症性のう胞は長い年月を経ると稀ではありますが癌化することなどから、長期にわたる経過観察が必要です。
引用
1)http://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=9
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