Column 80
2021/08/10 19:00
「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」という映画を観たことありますか。ブラッド・ピットとケイト・ブランシェットが主演した不思議な映画です。80歳の老人として生まれ、成長するにつれて若返り、最期は赤ん坊として死んだ、一人の男の数奇な人生を悠々と綴った愛の物語です。
からだは老人でもこころは青年のベンジャミン(ブラッド・ピット)と美しく成長したデイジー(ケイト・ブランシェット)。片やどんどん若返っていく男性と、片や歳をとっていく女性。
一瞬、一瞬を、大切に生きていますか―?全ての出逢いを、胸に刻んでいますか―?
これは、そうせずには生きていけない、特別な人生を送った男の物語。どれだけ心を通わせても、出逢った人々と同じ歳月を共に生きることができない、その運命。
「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」は実話でしょうか。若返っていく病気はありません。早老症 といって老化が実際の年齢よりも速く症状が進行する病気はあります1)。
早老症はハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群(HGPS)およびウェルナー症候群(WS)の総称で、HGPSの原因遺伝子は2003年に同定されましたが、老化が促進される機序は解明されていません2)
そもそも、老化とは何でしょうか。生物種によって生まれてから死ぬまでの時間はあらかじめプログラムされている、という考え方がプログラム仮説です3)。
細胞が一定の回数以上は分裂することができない理由のひとつとして、染色体の「テロメアの短縮」という現象があげられます。染色体DNAの末端部分はテロメアとよばれ、染色体の構造を安定化するなどの役割をもっています。細胞分裂においてDNAが複製されるたびに、テロメアの繰り返し塩基配列部分が端から50〜100塩基ずつ短くなっていきます。細胞分裂が繰り返され、テロメアがある限度を超えて短くなると、細胞はそれ以上分裂できなくなってしまいます。
不老不死の薬を求めて月に行った人間の昔話がありますが、限られた寿命、限られた時間、一瞬、一瞬を大切に生きていくことが素晴らしい人生なのです。
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