Column 308
2025/03/25 18:00
「歯は臓器」とも言われますが、歯や口腔内を清潔に保つことは全身の健康に大きく関わっています。 2022年にアメリカ心臓協会が発表した健康生活の8つの柱(Life’s Essential 8)は、食事、身体活動、ニコチン曝露、睡眠、BMI、血圧、血糖値、血中脂質ですが、これら8つの柱に、歯の健康習慣が加えられる可能性があるとする研究者もいます。
厚生労働省の調査によると、歯の健康を保つためにデンタルフロス(以下、フロス)や歯間ブラシを使用している人の割合は、全国から無作為に抽出した2,709人のうち50.9%、そして全ての年代で女性が多く、40~70代の女性は50%以上が使用しているとのことです。
そんなフロスの使用は口腔衛生の維持だけでなく、脳の健康維持にも役立つようです。米サウスカロライナ大学医学部神経学分野のSouvik Sen氏らによる研究で、フロスを週に1回以上使う人では、使わない人に比べて脳梗塞(虚血性脳卒中)のリスクが低いことが示されました2)。
フロスの使用と脳梗塞および心房細動の発症との関連を調べるため、6,278人を調査したところ、対象者の65%がフロスを使用していました。
25年もの追跡調査の結果、フロスを使用していた人は使用していなかった人に比べて、脳梗塞のリスクが22%低く、特に心原性脳塞栓症のリスクについては大幅な低下が認められました。また、心房細動のリスクも低下していたそうです。
この結果を受けてSen氏は、「フロスの使用が脳梗塞の予防に必要な唯一の方法というわけではないが、健康的なライフスタイルに加えるべき一つの要素であり、脳卒中のリスクを高める“炎症”のもとである口腔感染症や歯周病が軽減されるため、脳梗塞や心房細動のリスクが軽減するのは理にかなっている」と述べました。
また「未治療の虫歯や歯周病を有する人は世界で2022年には35億人に達しており、口腔の問題は最も蔓延している健康問題の一つだ。 歯科治療は費用がかかるが、フロスはどこででも安く入手できるし、健康習慣として取り入れるのも容易だ」と利点を挙げています。
コラム123に「フロスするおサルさん」を紹介しました。タイのカニクイザルが人間のフロスする様子を真似てフロスするという話ですが、タイのカニクイザルには脳梗塞がきっと少ないのでしょうね。
引用・参考文献
1)https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_33814.html
2)https://www.carenet.com/news/general/hdn/60160
©️ Nozaki Women's Clinic Allrights Reserved.
Designed by HARUNO design.