Column 305
2025/03/04 18:00
昔から「急いては事を仕損ずる」「急がば回れ」「急ぐ人は魚を釣り損なう」といって、急いだり慌てたりするとろくな事がないと言われています。時間に追われるあまり注意力が散漫になったりストレスが溜まりやすくなったりといった症状のことをハリーアップ症候群1)と言います。
ハリーアップ症候群は、航空業界でとくにパイロットが発症すると大規模な事故につながることで近年注目されてきました。昨年1月2日に羽田空港で海保機と日航機が衝突した事故では、海保機の機長が時間的余裕がない状況で判断力が鈍るハリーアップ症候群に陥った可能性が指摘されています2)。
この日、海保機は機材変更などで出発時間が遅れたために、滑走路の途中から離陸するインターセクション・デパーチャーを行うなどして、離陸準備を急いでいました。世界の航空機事故にはハリーアップ症候群が原因とみられる事例が多々あると言われています2)。
ハリーアップ症候群は、医療の世界でも注意すべきこととされています。手術中に予期せぬ大出血が起こったり、患者の容体が急変したりと、急いで対応しなければならない事態が起きやすいからです。慣れないスタッフを急かせたり、混乱を速く収拾しなければならない状況では注意が必要です。
そのために、日頃からの対策が必要になってきます。危険なことが起こりかけた時にはインシデントとして事例を報告して、注意を喚起します。実際に危険なことが起こった時にはアクシデントとして次回からは二度と間違いが起きないように関係者全員に周知します。
ハリーアップ症候群の対策3)には、急かされることから自分を遠ざける事が大切です。マインドフルネスや短時間の瞑想を日頃から行い、焦燥感を和らげる。全てのタスクを急ぐのではなく優先順位をつける。スマートフォンやSNSなどのIT機器から離れるデジタルデトックスを行う。軽い運動や趣味に没頭する時間を作る。などの方法があります。
制限時間が多すぎる世の中ですが、ケ・セラ・セラと、しばし心のゆとりを持ちたいものですね。
引用・参考文献
1)https://www.weblio.jp/content/ハリーアップ症候群
2)https://www.sankei.com/article/20241225-SMF74YVW4ZJ6DCCYBPRZWX25TQ/
3)https://note.com/juicy_lynx297/n/n3ac4c692c759
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