Column 279
2024/09/03 18:00
パリ・オリンピック2024が終わりました。物議をかもした開会式の演出、肉の少ない食事やエアコンのない部屋といった選手村の設備不良、誤審の多かった審判、などなどたくさんの問題が報じられた競技会でしたが、セーヌ川で泳いだ選手に体調不良が続出したことは大問題でした。
セーヌ川は、フランス北部を流れる河川でほとんどの流域がフランスに属しています1)。かつてパリの人々はセーヌ川を上下水道のどちらとしても利用しており、その結果、何度も疫病が流行していました。当時、世界一の水道システムが発達していたロンドンの様子を見たナポレオン3世が上下水道改革を行い、水質が改善したと言われています。
19世紀には人が泳げるまでに回復しましたが、その後水質汚染が再び進み、1923年には遊泳が禁止されています。シラク市長時代の1984年から「清潔なセーヌ川10ヶ年計画」が実施されましたが、現在でも豪雨時には下水の逆流を防ぐため、汚水が流れ込む箇所もあります。
そのセーヌ川で、トライアスロンやマラソンスイミング(オープンウオーター10km)が行われました。参加した選手の中には体調不良を訴える人が多く、入院した選手もいました。そこで水質調査を行ったところ、検出された菌の中には大腸菌の他にドブネズミの糞尿などに多いレプトスピラもありました2)。
レプトスピラ症は、1970年代前半まで、日本でも年間50名以上の死亡例があった感染症です。近年では衛生環境の向上により死亡者数は著しく減少しています。しかし、1999年の夏に沖縄県八重山地域においてレプトスピラ症の集団感染が起こりました。そのうち半数の患者は河川でのレジャーを介した感染であったとされています。
日本でも都市を流れる河川の水質汚染が問題になった時期がありましたが、最近はもとの環境を取り戻しつつあります。隅田川に白魚を復活させるプロジェクトも行われているほどです。それでも隅田川で泳ぐ人は、今のところいませんよね。
引用・参考文献
1)https://ja.wikipedia.org/wiki/セーヌ川
2)https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/531-leptospirosis.html
©️ Nozaki Women's Clinic Allrights Reserved.
Designed by HARUNO design.