Column 257
2024/04/02 18:00
国立循環器病研究センター脳神経内科の研究グループが、脳卒中の原因の一つである特発性椎骨動脈解離は枕が高いほど発症割合も高く、またより硬い枕では関連が顕著であることを立証し、殿様枕症候群(英語名:Shogun pillow syndrome)という新たな疾患概念を提唱しました1)。
特発性椎骨動脈解離というのは、首の骨のそばを通る椎骨動脈が裂ける病気で、心血管の危険因子がない若年や中高年でも発症します。裂けた血管に血栓ができ、これが脳に飛んで血管を詰まらせて脳梗塞を起こすことがあります。
この疾患は、お笑い芸人千鳥のノブさんがかかったことで有名になりましたが、裂けた血管が早々に凝固すれば軽症で済みます。ところが、血管の裂け目が血管の外まで広がると、くも膜下出血を起こすこともあり、非常に危険な状態になることもある病気です。
首をひねるような激しい運動や首への衝撃も引き金になるといわれていますが、「原因が判明していない」ことを指す「特発性」が病名に付いているように、多くは有力な原因が見つかっていませんでした。欧米に比べて東アジアで報告が多いのに関連する要因が見つからないのも謎でした。
国立循環器病研究センターの研究グループは、極端に高い枕を使っている人が存在することに注目しました。そうです、「殿様枕」です。殿様だけではなくて、江戸中期では高くて硬い枕が庶民にも流通していました。男性ではちょんまげ、女性では結い上げた髪を崩したくなかったのが理由のようです。
研究では、枕の高さが12cm以上を高値、15cm以上を極端な高値と定義して調べたところ、枕が高ければ高いほど特発性椎骨動脈解離の発症割合が高く、枕が硬いほど顕著で、柔らかい枕では緩和されました。
同センターのプレスリリース1)によると、1800年代の複数の随筆には、「寿命三寸楽四寸」「4寸(約12cm)の高い枕は髪型が乱れず楽だが、3寸(約9cm)の枕が長生きできる」といった言説が流布していたようです。
当時の人々は高い枕と脳卒中との関連を認識していたのかも知れません。
引用・参考文献
1)https://www.ncvc.go.jp/pr/release/pr_41662/
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