Column 239
2023/11/28 18:00
子宮が腟内へ落ちないように支える組織が子宮頸部の周りにあって子宮傍結合織と呼ばれています。子宮傍結合織は前方の膀胱子宮靭帯、側方の基靭帯、後方の仙骨子宮靭帯と直腸腟靭帯の4つを指します。この他に子宮体部と骨盤壁をつなぐ組織に子宮円靭帯があります。
この子宮円靭帯が引っ張られて痛みを感じることが妊娠初期に多く起こります。妊娠初期に「なんだか下腹部に引っ張られるような痛み」や「左右どちらかの足の付け根の痛み」を覚えることがあり、この円靭帯の痛みを「牽引痛」や「円靭帯症候群」と呼んでいます1)。
この痛みは、子宮の外側にある円靭帯が引っ張られている痛みのため、子宮の中にいる胎児に悪影響はありません。子宮が収縮して痛んでいるわけでもないので、流産や早産につながるような痛みではありません。子宮が大きくなってくる妊娠初期に円靭帯の牽引痛はよく起こりますが、妊娠中期になると痛みは自然に消失することが多いのです。
円靭帯症候群は右側に多く、子宮が真っ直ぐ上方に伸びていくのではなく、少し反時計回りに捻れて伸びていくために、右円靭帯が左より引っ張られて痛むようです。牽引痛があるときは激しい運動は控えて安静にしておけば、痛みは自然に和らぎますので、それから通常通り動いてもかまいません。
「左か右の痛み」ではなく、「下腹部全体や下腹部の真ん中が繰り返し痛む」時や「性器出血」をともなう場合には、円靭帯症候群ではない別の病気の可能性があります。これらの症状がある場合にはかかりつけの産婦人科医に相談してください。
円靭帯症候群は胎児に悪影響はなく、流産や早産につながることもありません。痛みがあるときは安静にすることで次第に良くなってきます。「一体何の痛みだろうか」と不安な精神状態で過ごすことが母子にとっては最も避けなければならないですから、円靭帯症候群のことを知っておくことは大切なことです。
引用
1)https://journal.obstetrics.jp/2021/07/14/round_ligament_pain/
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