Column 180
2022/10/11 18:00
東京大学の竹内昌治教授らの研究グループは、ヒト由来の細胞を培養して作った皮膚組織で表面を覆った指型ロボットの開発に成功したと、アメリカの科学誌に発表しました1)。生きた皮膚をまとった世界初のロボットだということです。
人間の皮膚のように切り傷をつけても、細胞増殖で自己修復するそうです。従来のロボットは表面がシリコンゴムで覆われていることが多く、傷つくと元に戻らず、内部の熱を逃がしづらいなどの課題がありました。より人間らしいヒト型ロボットや義肢の開発につながると期待されます。
そのロボットの作成方法は、3Dプリンターで太さ1cm長さ5cm3つの関節がある指の形状の骨格を作成し、細胞の足場となるゼリー状のコラーゲンとヒト由来の真皮細胞を混ぜて骨格状で培養し、指ロボットを真皮組織で覆いました。次に表面に表皮細胞をまき、再び培養して暑さ1.5mm程度の2層の皮膚組織が完成しました2)。
モーターを使って指の関節を曲げ伸ばしするような動きをしても皮膚組織は破けず、関節部分には自然なシワができ、数十回の曲げ伸ばしに耐える弾力性があったそうです。指型ロボットに傷を付けた後にコラーゲンのシートを貼ると、7日程度で傷口が修復できたとのことです。現在は血管など養分を供給する仕組みがないため、培養液に浸さなければ長期間はもたないそうです。
今回開発された技術は、義手や培養皮革などにも応用できる可能性があります。筋肉や皮膚、感覚組織などの生体組織を素材にしたロボットは「バイオハイブリッドロボット」と呼ばれ、修復能力や感度の高さなどで産業応用が期待されています。
今後の課題は機能性の向上です。現在は神経や血管などは再現されていないのですが、「機能を追加することで、センシングなど生物の機能を持つ人間らしいロボットなどへ応用を目指したい」(竹内教授)とのことです。
ターミネーターの世界が実現するのもそう遠い未来ではなさそうです。
引用
1)1https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/press/z0114_00019.html
2)産経新聞 2022.6.10 11版24面
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