パラサイト・イブ

遺伝子

院長コラム

「ミトコンドリア」をご存知でしょうか。細胞の中には遺伝情報のDNAが入っている核があり、核以外の部分は細胞質といって遺伝情報はありません。ところが細胞質にはミトコンドリアが存在していて、独自にエネルギーを産生しています。つまり細胞の中に、別の生命体が住んでいるということです。

ヒトに寄生して何億年も生き延びていた遺伝子「イブ」は、太古の昔から存在するミトコンドリアで、ミトコンドリアは母からのみ子へと遺伝していきます。そのイブ遺伝子がモンスター化する物語が、東北大学大学院薬学博士課程に在籍中の瀬名秀明氏が1995年に発表した「パラサイト・イブ」です１）。

「パラサイト・イブ」は、第2回日本ホラー小説大賞を受賞し、1997年に映画化されて、1998年にはゲームにもなりました。

人間は、父親と母親から両方の遺伝子を受け継ぎますが、父親のミトコンドリアは受精の時には破壊されて、ミトコンドリアは「母親のもの」しか伝わらないことが分かっています。つまり、ミトコンドリアの遺伝子を調べることにより、人間の先祖を調べることが可能なのです。

このミトコンドリアのDNAを調べたＣＮＮニュースが少し前に話題になっています２）。「英国のウィリアム王子がインド人女性の直系子孫であることがＤＮＡ鑑定の結果、明らかになった。」という内容です。それによると、

『ＤＮＡ遺伝子による祖先調査会社「ブリテンズＤＮＡ」は、王子の母親である故ダイアナ元妃の２人の母方のいとこのＤＮＡ検査を行い、（中略）その結果、このＤＮＡがウィリアム王子に伝わった経緯が明らかになった。

ダイアナ元妃の第４曽祖母の父親はスコットランド人の商人で、インドのムンバイの北に位置するスーラトという都市で働いていた。そしてインド人女性との間に生まれた娘（ダイアナ元妃の第４曽祖母）に、母親からのみ子に伝わるミトコンドリアＤＮＡが伝わり、さらにその娘の子孫たちへと受け継がれた。そしてその子孫の１人が、ダイアナ元妃の母親フランセス・ロシェだった。ブリテンズＤＮＡの主任科学者ジム・ウィルソン氏は、「ウィリアム王子はごくわずか、恐らく0.5％程度のインド人のＤＮＡを持っていると思われる」と述べた。』

ミトコンドリアと人類の歴史は連綿と繋がっています。皆さんのミトコンドリアも意外なルーツがあるかも知れませんよ。

引用
１）https://ja.wikipedia.org/wiki/パラサイト・イヴ
２）https://bit.ly/3NUOG5l

この記事を書いた人

野崎雅裕野崎ウイメンズクリニック院長: 福岡市天神の産婦人科、野崎ウイメンズクリニックの院長。女性医学の専門医として、九州大学病院などにおいて、思春期から更年期女性のホルモン療法や不妊治療、漢方療法、月経痛や女性のこころとからだの悩みに関する医療に長年従事。ホルモン療法やピルの使い方、月経痛の対処法や月経移動の説明にも精通した熟練スタッフとともに、すべての患者様へあたたかいケアを行っている。

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