Column 315
2025/05/13 18:00
ネコは5歳ごろから腎機能に異常が出始め腎臓病で死ぬことが多いのですが、その原因は長く不明でした。AIM医学研究所の宮崎所長は、スイス・バーゼル免疫学研究所の主任研究員だった1999年に、多くの動物の血中に存在し、体内の老廃物を掃除するタンパク質「AIM」を発見しました1)。
AIMは「Apoptosis Inhibitor of Macrophage」の略語で、マクロファージのアポトーシスを阻害するタンパク質です。マクロファージとは、ものを食べる細胞の代表格で貪食細胞と呼ばれます。アポトーシスは細胞の消滅という意味でプログラムされた細胞死のことです。
アポトーシスについては過去のコラム(コラム91)で触れていますので、ご一読ください。
通常、抗体の一種である免疫グロブリンM(lgM)と結合して血中に存在しているAIMは、体内に老廃物が溜まってきた時にその結合をやめ、老廃物に近づきます。この動きに伴って、老廃物を掃除する貪食細胞が働くのです。
宮崎所長らは、このメカニズムをヒントにネコの腎臓病の原因を突き止めました。ネコのAIMは腎臓に老廃物がたまってもIgMと離れないため貪食細胞が働かず、腎臓に老廃物が持続的に蓄積して慢性的な炎症が起こることが分かったのです。つまり、ネコの腎臓病は先天的にAIMが働かないことによる一種の遺伝病といえます。
ここから導き出せる答えとして、ネコにAIMを補充してやれば腎臓病は防げることになります。宮崎所長らは、ネコ用AIM薬の開発を開始しました。この新薬は近々臨床試験が始まり、早ければ2年後には実用化されるということです2)。
宮崎所長らの研究は、全国の愛猫家に注目されて、半年で3億円近い寄付が寄せられたそうです。ネコ用AIM薬が実用化されれば、長寿ネコが増えて、ネコの超高齢化社会が到来するかもしれませんね。
引用・参考文献
1)https://iamaim.jp/outline/
2)https://www.sankei.com/article/20250322-2GNPVMTRYFPGFETPJJSTCCUNWI/
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