Column 93
2021/10/06 18:00
E.T. 1982年スティーブン・スピルバーグ監督の映画です。原題は「E.T. The Extra Terrestrial」「地球外生命体」という意味ですが、E.T.と言った方があの宇宙人の格好や物語を思い出して懐かしくなります。地球に取り残されたE.T.と少年エリオットとの友情の物語でした。当時、史上最高の映画の一つと評されて、第55回アカデミー賞では、作曲賞、視覚効果賞、音響賞、音響編集賞の4部門を受賞しています1)。
E.T.は大人にも子どもにも素敵な夢を与えてくれました。産婦人科の世界にも「ET」があります.不妊症で悩むカップルの夢を叶えてくれるETで、これは体外受精・胚移植(IVF-ET)の胚移植(ET;Embryo Transfer)です。体外で卵子と精子を受精させて、それを子宮に戻す=胚を移植する、それがETです。体外での受精率はほぼ100%ですが、ETされた受精卵=胚が着床する率は30歳以下では40%、30〜35歳で35%、35〜40歳で25%、40歳以上で10%以下と下がります2)。
IVF-ETでの着床率がこの数値ですから、妊娠が順調に経過して出産にいたる率はもう少し下がります2)。それでは、自然妊娠はどうでしょうか。私達産婦人科医は患者さんへの説明として、「普通に性生活をおこなっているカップルのうち、80%が1年以内に妊娠します。次の年にあとの10%が妊娠します。残りの10%に不妊治療が必要になります。」このようにお話ししています。
妊娠が成立するためには、2000万以上の精子の中でも正常で元気のいい精子の一群が、子宮の頸管に入り、子宮の内腔を進み、卵管の狭い所を抜けて、卵管の広いところ=膨大部で、排卵してくる卵子を待ちます。ここで卵子の中に入れる精子は1匹だけで、受精卵となった胚は卵管膨大部に3日間とどまり細胞分裂をくり返します。その後、子宮の内腔に移動してさらに3日間着床する場所をさがします。精子や胚の旅も、遠い宇宙から地球に来たE.T.と同じくらいの長旅だと思いませんか。
引用
1)https://ja.wikipedia.org/wiki/E.T.
2)https://kiba-park.jp/column/c13-0805/
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