Column 76
2021/07/08 19:00
コラム75 で「人工授精」と「体外受精」のお話を書きました。
当院では人工授精のみ行っていますが、人工授精には AIH と AID の2つがあります。
(福岡市中央区 天神 に位置する 産婦人科 野崎ウイメンズクリニック)
当院で行っているのはAIHですが、これは、Artificial Insemination with Husband’s semenの略で、夫の精子を用いた人工授精という意味です。
AIHの歴史は古く、1799年、イギリスの外科医であるHunterがヒトへの適応を行ったのが最初だとされています1)。
本邦においては、1891年にAIHに関するドイツの医学書の紹介(人工妊娠新術、大野勝馬訳)が始まりとされています。このような歴史背景の中、現在、AIHは、不妊治療 の一つとして広く世界中の日常診療で実施されています。
福岡市天神周辺のクリニックでも AIH は 不妊治療 の一手段として行われています。
当院では、毎週火曜日に 不妊治療 専門の吉満陽孝先生(元よしみつ婦人科クリニック院長)に AIH のプランニングをしていただいております。
AIHを希望される方は、当院ホームページの「不妊外来」をご覧ください。
一方で、AIDというのは、Artificial Insemination with Doner’s semenの略で、提供精子を用いた人工授精という意味です。
AIDの実施医療機関については、日本産科婦人科学会の見解2)に基づいた厳格な規定があります。不妊治療の際に適応があるかどうか、可能性があるかどうか、医師に相談することが大事です。日本では、慶応大学病院で1949年に開始されました。
私の出身校である九州大学病院では、AIDの適応がある患者さんには、排卵時期の少し前にデータを持って東京へ行っていただき、そこでAIDを受けてきてもらいました。
現在の不妊治療から考えると、当時の患者さんには大変な苦労をしていただいていたと思います。
日本産科婦人科学会は1997年に営利目的の精子提供を禁止して、AIDの対象を夫婦に限り実施施設を登録制にしました。登録施設は、2003年に26ありましたが、2016年には14に減少しています。このうち現在も実施している施設は7カ所だけでした3)。
実施施設が減少した背景には、子どもに精子提供者の情報を知らせる「出自を知る権利」が世界的に認められつつあり、将来のトラブルを心配して精子提供者が減っていることなどがあるようです3)。
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