Column 161
2022/05/31 18:00
「慕情」は1955年のアメリカ映画で、第二次世界大戦後の香港を舞台とした恋愛映画です1)。中国とイギリスの混血である女性医師が、中国国民党の将校だった夫の戦死で未亡人となり、その後シンガポールに別居中の妻がいるアメリカ人の特派員と恋に落ちます。
「慕情」の原題は「 Love is a Many-Splendored Thing 」です。最近のアメリカ映画は、原題がそのまま「カタカナ」で公開されることが多いように感じますが、「愛は多くの素晴らしきこと」という原題を「慕情」と意訳して公開した日本の映画人は、何と素晴らしき「感性」を持っていたのでしょうか。
また、主題歌「慕情(Love is a Many-Splendored Thing)」は、第28回アカデミー賞歌曲賞を受賞し、映画音楽史上屈指の名曲と言われています1)。この主題歌をカバーした歌手は大変多く、コニー・フランシス、アンディ・ウイリアムズ、フランク・シナトラ、マット・モンロー、ナット・キング・コール、エンゲルベルト・フンパーディンクなど枚挙にいとまがありません。
Love is a Many-Splendored Thingの曲が流れてきます。恋に落ちた二人は香港での素晴らしきひとときを過ごします。ビクトリア・パークや九龍など古き良きイギリス統治時代の香港でのひとときです。しかし、二人の恋愛は、香港の白人社会や女性医師が務める病院上層部からスキャンダル視されます。
そのような二人を戦争が引き裂きます。朝鮮戦争の取材を命じられたアメリカ人特派員は戦場へと赴きます。女性医師は居づらくなった病院を辞めて友人宅で彼の帰りを待ちわびます。そこへ届いたのが、彼の戦死の知らせでした。朝鮮戦争では14万人の米軍兵士が戦死しています2)。
2022年2月24日のロシア軍によるウクライナ侵攻から、今日で1ヶ月が経ちました。両国ともに多くの戦死者を出していますが、報道関係者の戦死も多くなっています。戦死者には家族があり、パーナーがあり、愛があり、夢がありました。遠いところへ行ってしまった人を慕う気持ち、それは慕情です。
引用
1)https://ja.wikipedia.org/wiki/慕情
2)https://www.hns.gr.jp/sacred_place/material/reference/03.pdf
©️ Nozaki Women's Clinic Allrights Reserved.
Designed by HARUNO design.