Column 114
2021/12/19 20:02
今回のコラムは「指のヘバーデン結節」についてです。
起床時に手がこわばり、手指の末端、第1関節が痛み出して赤くなりプクーッと腫れて変形してしまうのを「ヘバーデン結節」といいます。
中高年女性、とくに更年期の女性に多くて、四谷メディカルキューブ手の外科マイクロサージェリーでは、患者の90%は女性だそうです。しかもその90%は更年期以降の女性に起こります1)。
原因は、更年期の頃から始まる女性ホルモン(エストロゲン)の減少が、指の関節にある滑膜という組織の炎症を引き起こしてしまうことにあります。手がこわばるので「リウマチ」が心配になり、整形外科を受診する患者さんが多いのですが、リウマチではないと診断されることがほとんどです。
まさか、手のこわばりの原因がエストロゲンの減少にあるとは、普通は想像しませんので、その時点で婦人科を受診する患者さんは大変少ないのです。手のこわばりを我慢して日常生活を送り、ペットボトルを開けたり、料理器具を使ったり、レジ袋を指にかけたり、していくうちに指が赤く腫れて痛み出します。
一方で、福岡市天神にある私のクリニックでは、更年期や中高年の女性が手のこわばりを訴えて受診されると、まず「エストロゲンの減少」という視点から診察します。血液検査やレントゲンでは異常は表れないので、エストロゲンを補充して指の症状が改善すれば「ヘバーデン結節の前兆だ」ということがわかります。
手のこわばりや指の腫れを訴えて受診された患者さんにエストロゲンを補充すると、1カ月後に受診されたときには「ずいぶん指が楽になりました」「指の腫れがなくなりました」「パソコンが打てるようになりました」と言われます。「おかげでピアノが弾けるようになりました」という保育士さんもいました。
指と女性ホルモン、一見関係がないように思われますが、女性ホルモンであるエストロゲンは男女ともに全身の臓器に働きます。女性ホルモンは子宮と乳房の専属という思い込みで、いろんな病気が見落とされているのです。
引用
平瀬雄一: 日本女性医学学会雑誌, 25, 307-311, 2018
©️ Nozaki Women's Clinic Allrights Reserved.
Designed by HARUNO design.