【骨盤底筋ケア編#3】骨盤底筋群の働きを良くするコツ2
骨盤底筋群の働きを良くするためには3つのコツがあります。
①筋肉が柔軟であること
②股関節の動きがスムーズであること
③しっかりと呼吸ができていること
1つ目は骨盤底筋ケア編#2でお伝えしましたので、今回は2つ目の「股関節の動きがスムーズであること」について解説していきます。実は、骨盤底筋群の働きには股関節の柔軟性、特に臀筋群(でんきんぐん=お尻周りの筋肉)の柔軟性が大きく関わっています。
【なめらかな股関節づくり】骨盤底筋群と梨状筋の関係
お尻にはたくさんの筋肉がありますが、中でも梨状筋(りじょうきん)と内閉鎖筋(ないへいさきん)がキーポイントになります。
梨状筋とは
梨状筋は、骨盤内から大腿(だいたい=太もも)にかけて伸びる筋肉で、主な役割は以下の3つです。
①股関節の外旋:股関節を外側に回す動きをサポートします。
②股関節の安定化:骨盤と大腿骨をつなぎ、股関節の安定性を保ちます。
③股関節の外転:股関節が曲がった状態の時に、大腿骨を外側に開く動きをサポートします。
小さな筋肉ながら、非常に大切なポジションにいる働きものです。梨状筋と骨盤底筋群は、骨盤の安定性と機能における関係があり、以下のようなつながりがあります。
- 位置的な関係
梨状筋は骨盤の後方に位置し、大腿骨を動かす主な役割を持つ一方、骨盤底筋群は骨盤の底部にあり、内臓を支える役割を果たします。このため、梨状筋と骨盤底筋群は骨盤内で隣接する位置にあります。
- 骨盤の安定性
骨盤底筋群が骨盤を支え、内臓を保つのに対して、梨状筋は骨盤と大腿骨を連結し、股関節の動きを安定させます。両者が協調して働くことで、骨盤全体の安定性を維持します。
- 機能的な連携
梨状筋が硬くなると骨盤の動きや位置に影響を与え、骨盤底筋群に過剰な負荷がかかることがあります。一方で、骨盤底筋群が弱いと、骨盤全体の安定が崩れ、梨状筋が代償的に緊張することがあります。働きすぎて硬くなってしまっているということですね。
【なめらかな股関節づくり】骨盤底筋群と内閉鎖筋の関係
内閉鎖筋とは
内閉鎖筋は、骨盤内から股関節に向かって伸びる筋肉で、主な役割は以下の3つです。
①股関節の外旋:股関節を外側に回す動きをサポートします。
②股関節の安定化:骨盤と大腿骨をつなぎ、股関節の安定性を保ちます。
③股関節の外転:股関節が曲がった状態の時に、大腿骨を外側に開く動きをサポートします。
内閉鎖筋と骨盤底筋群は骨盤内で隣接し、股関節の動きと骨盤の安定のために連携しています。
- 位置的な関係
内閉鎖筋は骨盤内側の壁を構成し、骨盤底筋群はその下部に位置して内臓を支えています。
- 機能的な連携
骨盤底筋群が内臓を支えて骨盤を安定させるのに対し、内閉鎖筋は股関節を動かしつつ骨盤を安定させます。この相互作用が骨盤の全体的な安定を生み出しています。
- 筋膜の連続性
内閉鎖筋の筋膜は骨盤底筋群を構成する筋肉のひとつである肛門挙筋(こうもんきょきん)と連続しており、動きや張力が相互に影響を与えます。
これらの筋肉は骨盤の安定と機能を支えるために密接に関係しており、一方の働きが低下することで、もう一方の働きに影響を及ぼすことがあるのです。
【なめらかな股関節づくり】お尻周りの筋肉が硬くなりやすい原因
- 長時間座りっぱなし
デスクワークや運転が多い人は、骨盤周りの筋肉が緊張しやすく、硬くなりやすいです。
- 姿勢が悪い
猫背や骨盤が後傾している人は、これらの筋肉に不必要な負荷がかかるため、硬くなりやすいです。
- 運動不足
股関節周りを動かす機会が少ないと、血流が滞り、筋肉が硬直しやすくなります。
- 片側に偏った動きが多い
片足重心や偏った姿勢で立つ・歩くクセがある人は、梨状筋や内閉鎖筋が過剰に使われて硬くなりやすいです。
- 過度な運動をしている
ランニングやスポーツで股関節を酷使する場合、筋肉が過緊張の状態になり、硬くなることがあります。
- ストレスを感じやすい
精神的な緊張が骨盤周りの筋肉に作用し、硬くなることがあります。
これらの要因を意識し、適切なケアを行うことが大切です。具体的な方法を次の段落でお伝えします。
【なめらかな股関節づくり】今日からできる梨状筋リリース法
《準備するもの》
テニスボール1個 硬めの床やヨガマット
《寝て行う場合》
- 体勢を取る
仰向けに寝ます。
両膝を立て、片方のお尻の下にテニスボールを置きます。
- 梨状筋を狙う
ボールが梨状筋(お尻の中央より少し外側)に当たるように調整します。梨状筋が硬くなっている場合、押されると「痛気持ちいい」感覚があります。
- ゆっくり動く
お尻を小さく回転させながら、痛みが強すぎない範囲でボールを動かし、凝りや張りを感じる箇所を探します。張りを感じたポイントで30秒~1分程度静止してみましょう。
- 深呼吸を意識する
リリース中は深くゆっくり呼吸し、筋肉を緩めます。
《座って行う場合》
- 体勢を取る
椅子や床に座り、片方の臀部の下にテニスボールを置きます。足を組むような形でリリースしたい側の足を反対の膝の上に乗せます。
- 梨状筋を狙う
お尻を少し動かして梨状筋の張りを感じるポイントを探します。痛みが和らぐまで、30秒~1分程度静止してみましょう。
《注意点》
※強く刺激しすぎない:痛みを我慢せず、リラックスした状態で行いましょう。
※無理に続けない:痛みが強い場合は中止し、専門家に相談してください。
※片側ずつ行う:両側をバランスよくリリースします。
※1箇所1分以上行わない:筋肉を傷めないためにも1分以内で実施してください。
【なめらかな股関節づくり】今日からできるストレッチ
梨状筋のストレッチ
《寝て行う場合》
- 仰向けに寝ます。両膝を立て、ストレッチしたい側の足首を反対側の膝の上に乗せて「4」の形を作ります。
- 両手で反対側の太ももの裏をつかみ、胸に向かって引き寄せます。
- お尻の奥が伸びるのを感じながら、20~30秒間キープします。反対側も同様に行いましょう。
- 反対側も同様に行いましょう。
《座って行う場合》
- 椅子や床に座り、ストレッチしたい側の足を反対側の膝の上に置きます。
- 背筋を伸ばしたまま、上半身をゆっくり前に倒します。
- お尻の奥が伸びるのを感じながら、20~30秒キープします。
- 反対側も同様に行いましょう。
内閉鎖筋のストレッチ:蝶のポーズ(バタフライストレッチ)
- 床に座り、両膝を曲げて足の裏を合わせます。
- 合わせた足を両手で包んで、膝を床に近づけるように力を抜きます。
- 内ももの奥が伸びるのを感じながら、20~30秒間キープします。
《注意点》
※強く刺激しすぎない:痛みを感じない範囲で行いましょう。
※呼吸を止めない:ゆったりとした呼吸を心がけ、リラックスした状態で行いましょう。
これらを毎日継続して行うことで、梨状筋・内閉鎖筋の緊張緩和や柔軟性向上につながります。ストレッチを行なった後に骨盤底筋群の収縮(おしっこを我慢するイメージやお尻の穴を閉めて引き上げるイメージ)を意識してみると、その変化が感じられるはずです。股関節が柔軟になることによって、骨盤底筋群が働きやすい状態がつくれます。毎日意識して、今回ご紹介したエクササイズを実践してみてください。
1.Kathe Wallance.産後リハにおける腰部・骨盤へのアプローチ.丸善出版;2017.
2.Kari Bo,Bary Berghmans,Siv Morkved.et al.エビデンスに基づく骨盤底の理学療法-科学と臨床をつなぐ-原著第2版.医歯薬出版;2017.
3.Richard L.Drake,A.Wayne Vogl,Adam W.M.Mitchell,et al.グレイ解剖学アトラス原著第2版.エルゼビアジャパン株式会社;2015
この記事を書いた人
漆川 沙弥香
LUTIS代表|理学療法士・医療科学修士
福岡市中央区の女性専門サロンLUTISの代表。理学療法士として20年以上のキャリアを持ち、国内の学術機関や海外の専門家から”女性の健康”に関する高等教育を受ける。サロンでは、「月経痛・PMS」「産後の腰痛・尿もれ」「更年期の尿もれ」など女性のライフステージに合わせた症状に対して施術やエクササイズを通したアプローチを行っている。大学院(医療科学修士課程)を修了し、現在も研究を続けるかたわら大学の講師や自社主催の専門家向け講座を実施している。
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