ヘルスケアコラム
2024/11/01
40代以上のみなさん、何となくトイレが近くなったり尿を我慢できる時間が短くなったように感じた経験はありませんか?そのままにしておくと、トイレまで我慢できなくなってしまったり、咳やくしゃみをした拍子、重い荷物を持った時などにふと漏れてしまうことがあるかもしれません。まずは、そんな尿もれについて解説していきます。
瞬発的にお腹に力が入ったときに尿が漏れてしまうものを指します。重い荷物を持ち上げた時、走ったりジャンプをした時、咳やくしゃみをした時などにみられます。実は、多くの女性が悩まされており、加齢や出産を機に出現しやすくなるとされています。過重労働や排便時の強いいきみ、喘息や花粉症などで慢性的に咳やくしゃみをする方にも多い症状です。
急に尿がしたくなったり(尿意切迫感)、我慢できずに漏れてしまうものを指します。特に原因がないのに、勝手に膀胱が収縮してしまうことで起きる症状です。排尿の回数が多くなりトイレに駆け込むようなことも増えるため、外出時や乗り物に乗る際に困ることから、日常生活の質に大きな影響を与えます。
腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁が併発している状態を指します。主に高齢の方に多くみられる傾向があります。
⚫︎肥満
肥満により腹囲が増大すると骨盤内にある膀胱に圧が加わり、尿もれが起こりやすくなると言われています。普段から体重のコントロールを大切にしましょう。
⚫︎身体活動
大きな腹圧がかかる動作を頻繁に行うと、その分尿失禁のリスクも大きくなります。重い荷物を運ぶなどの場合には、一気に抱えるようなことは控えて小分けにするなどの工夫をしてみてください。
⚫︎慢性的な咳やくしゃみ
喫煙、花粉症、喘息などにより咳やくしゃみをする機会が増えると、何度も腹圧がかかることになるため、尿失禁のリスクが高まります。癖になってしまわないよう、症状が続く場合には呼吸器内科や耳鼻咽喉科などを受診しましょう。
⚫︎食事
アルコールやカフェイン、辛いものなどは、膀胱を刺激する要因になります。また、水分を摂りすぎていることが頻尿につながる可能性があります。水分摂取量は、体重1kgあたり25~30mlを目安にすると良いでしょう。
⚫︎便秘
便秘により“いきむ”回数が多いことが尿漏れを誘発する可能性があります。食物繊維の摂取を意識するなどの便秘予防に努め、ふうっと息を吐きながらリラックスした状態で排便するよう心がけることをおすすめします。
腟粘膜の萎縮:女性ホルモンの低下が原因となる場合があります。エストロゲンが低下するとコラーゲンが減少して腟粘膜が薄くなったり、潤い不足により硬くなることがあります。すると、腟によって後方から支えられている尿道がうまく機能しなくなり、尿もれのような排尿障害を引き起こすことがあります。
骨盤底筋群の緩み:エストロゲンの低下により骨盤底筋群の働きが弱まると、膀胱や尿道、子宮など骨盤内の臓器を支える力が低下します。それに合わせて尿道を閉める力が弱くなり、尿もれが起きやすくなるのです。これは、尿もれの中でも①の腹圧性尿失禁に大きな影響を与えると言われています。
女性ホルモンの低下以外にも、加齢や経膣分娩とその回数によっても骨盤底筋群の筋力低下が起きる場合があります。特に、経膣分娩の際には骨盤底筋群の一部が約3倍に伸びると言われており、出産回数が多いほど尿もれになるリスクは高くなるとされています。
最後に、尿もれの主な原因となる骨盤底筋群の筋力低下をケアするトレーニングについてお伝えします。プロセスは全部で4つです。
①場所を意識する
ハンドタオルをロール状にして椅子の座面に縦に置きます。そのタオルの上に、尿道から肛門までが当たるようにして座ります。タオルが当たっているところが骨盤底筋群です。まずは、日常的にタオルを当てて座り、感覚刺激を入れるようにしてみましょう。そうすると「ここを収縮すればよいのか!」という意識が芽生え、骨盤底筋群のトレーニングを行う準備が整います。
②収縮の練習
座面のタオルを“つむじ”に向かって引き上げるイメージで骨盤底筋群を収縮する練習をしてみましょう。「膣やお尻の穴でタオルを吸い上げる」「おしっこを我慢する」「お尻の穴を閉じて引き上げる」ような意識をすると感覚が掴みやすいです。
③チェックする
筋肉を収縮するイメージが掴めたら、実際に収縮できているかを確認してみましょう。お尻の割れ目の一番上にある“尾骨”を触ってみてください。もし、上手に収縮できていたら、尾骨が内側に動くのが感じられると思います。触っている手から尾骨が離れる感覚です。その際にお尻や内もも、お腹に力が入りすぎていたら、もう少し優しく骨盤底筋群を引き上げるイメージで練習してみてください。
④動作と結びつける
正しい骨盤底筋群の働きが習得できたら、日常生活の中に取り入れましょう。おすすめは、何か動作をする際に、まず最初に骨盤底筋群を引き上げるイメージをすることです。重いものを持つ時、咳やくしゃみが出そうな時などなど、ぜひお試しください。
今回は、尿もれの原因とそれを予防するエクササイズについてお伝えしました。尿もれは重篤な症状ではないものの、生活の質を大きく揺るがすものです。誰かに気軽に相談できない悩みでもあるかと思います。もし、今回ご紹介したエクササイズに挑戦いただき、症状の緩和がみられない場合には、婦人科や泌尿器科を受診されることをおすすめします。
1.日本産婦人科学会:産科婦人科用語集・用語解説集改定第4版.日本産婦人科学会編,日本産科婦人科学会事務局,東京,2018.
2.女性下部尿路症状診療ガイドライン第2版:日本排尿機能学会 日本泌尿器科学会.
3.日本泌尿器科学会ホームページ,https://www.urol.or.jp/.
4.武谷雄二:エストロゲンと女性のヘルスケア,MEDICAL VIEW,2015.
5.ウィメンズヘルス理学療法研究会:ウィメンズヘルスリハビリテーション,MEDICAL VIEW,2014.
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