Column 58
2020/07/15 18:00
妊婦さんの大きなお腹に木製のラッパのような器具を当てている助産師さんの姿を見たことがありますか?あの木製の器具がトラウベの聴診器です。胎児の心音を聞くための医療器具で、1816年にフランス人医師のラエナックが発明した聴診器の原型にドイツ人医師のトラウベが使いやすく携帯に便利な聴診器に改良したものです1)。
私たちが使用してきたものは木製がほとんどでしたが、中には水牛の角でできたものや、ABS樹脂製のものもあります2)。ラッパのように開いている方を妊婦さんの腹部に当てて胎児の心音を聴くのですが、時には反対側を当てて「う〜ん、心音が聴こえない、心音が無い、大変だぁ〜」と騒いでいた研修医もいました。
トラウベの聴診器は「生の胎児心音」を聴くという点では他に代えがたいものですが、正しく聴こえているのか否か、その人にしか聴こえない、というように客観性が無いというのが最大の欠点でした。そこで、1950年代頃から胎児診断の研究が始まりました3)。
胎児診断の研究は、胎児心電図、心音図、胎児心音電気聴診器から始まり、超音波断層法の進歩でさらに進みました3)。その後、子宮収縮曲線と胎児心拍数曲線が同時に記録される分娩監視装置が開発されて広く普及したために、客観的評価が必要とされる産科の臨床は飛躍的に進歩しました。
■引用・参考文献
1)https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=10145
2)https://ikakikaihozon.org/collection/
3)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsmbe/49/2/49_2_297/_pdf
4)https://bit.ly/3AtchCo
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