Column 48
2020/02/15 18:00
「テロメア」という言葉を聞いたことがありますか? 染色体の末端にキャップのように存在している構造体で、大切な遺伝子情報を保護する役目があると考えられています。語源は、ギリシア語の「末端」を意味するtelosと「部分」を意味するmerosから来ています1)。テロメアは、細胞の老化や寿命に深く関わっていると言われています1)。
テロメアは細胞が分裂によって自己複製する度に縮んでいき、テロメアが一定の長さ以下になると細胞は分裂を停止してしまいます。このためテロメアは「分裂時計」あるいは「細胞分裂数の回数券」ともいわれています1)。実際に、子供と老人のテロメアを比べると老人の方が短いのです。
ソーク研究所のエリザベス・ブラックバーン博士達が発見した酵素「テロメラーゼ」には、テロメアが短くなるのを遅らせたり、伸ばしたりする働きがあります。この発見で、ブラックバーン博士たちはノーベル賞を受賞しています2)。テロメアが短くなってくると、遺伝子の変異が起きやすくなり、がんになりやすいと考えられています2)。 ヒトのテロメラーゼ酵素の構造について報告する論文が、科学雑誌natureに掲載されています3)。テロメラーゼはがんや老化に関係しているとされるため、テロメラーゼ関連因子を利用した治療法の開発に向けた重要な一歩となりますが、一方でテロメラーゼが多過ぎると、いろんな形の悪い染色体がたくさん出来ることが分かっていて、このように人工的にテロメラーゼを無理やり多くするというのは、やはりもろ刃の剣で、悪い副作用が出る可能性が高いのです2)。
■引用・参考文献
1)https://matome.naver.jp/odai/2144241830444652101
2)https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3974/index.html
3)https://www.natureasia.com/ja-jp/nature/pr-highlights/12483
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