Column 40
2019/10/15 18:00
1989年、米国留学中に不妊治療で先駆的であったテキサス大学サンアントニオ校で研修する機会を得ました。1987年からオハイオ州シンシナティ大学で研究者のポストにありましたので、米国内からの研修依頼には、容易にOKが出たようです。
指示された手術場の待機室にいると、手術室から入れ替わり立ち替わり医師達が来ては、スナックをつまみ、コーヒーを飲んで、食事もしていきます。手術場の待機室には、温かいパスタ、ドリア、デニッシュ、スープ、コーヒー、何でもありのカートがあり、「何か、食べる?」と勧められ、思わずクロワッサンをいただきました。もちろん、無料です。
これは、今から30年前のアメリカの手術場での現実です。医師、といえばアメリカでもトップクラスのエリートですが、トップクラスのビジネスエリートからすれば、医師といえども、外科医はブルーカラーの職人です。それでも、職人さんたちの職場には、弁当ではなく、ちょっとしたカフェテリアレベルの食事の待遇が当然なのです。
私が研修医だった頃、40年前の九大病院手術場にもカフェテリアという名前のレストランがありました。これは完全なレストランで、手術場の中と階段で通じていて、手術着を着替えていくことが出来ました。10時間を超えるような手術で、術者が途中で一服している姿もよく見かけました。衛生面での見地から廃止されたように記憶しています。
現代の日本はどうでしょうか。病院の中に売店やコンビニがあります。患者さん、家族、外来者、そこに混じって医師や看護師も昼食や夕食の弁当を買っています。白衣で出てきて、今日の唐揚げを入れてね!とやっています。30年前のアメリカの職場環境からすれば、あまりにも悲しい、哀しい、悔しい、ですね。
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