Column 318
2025/06/03 18:00
日本では、旧暦6月を「水の無い月」と書いて「水無月」と呼び習わしてきました。6月といえば梅雨を思い浮かべるため、やや違和感のある名称ですが、その由来はどんなものなのでしょうか?
水無月の由来は諸説ありますが、「無」は「ない」ではなく助詞(名詞に意味を与える語)の「の」であり水無月=「水の月」であるとする説が有力です。旧暦6月は田植えの時期にあたり、田植えが一段落して田に水を引く「水張月(みずはりづき)」「水月(みなづき)」を語源とする説もあります。
田植えを仕終えた月、すなわち「皆仕尽(みなしつき)」であるとする説、「な」は「鳴」からきており、水の力が鳴り響く月、水の力が新たな事物を生み出す月、を表しているという説もあるなど、田植えが人々の暮らしを支える重要な仕事であったことをいまに伝える名称です。
また、新暦に置き換えると6月末から8月初旬にあたるため、梅雨があけて日照りが続くタイミングと重なり、暑さで水が干上がる「水の無い月」という説も、文字通りの語源として現代の我々には理解しやすいですね。
宮中では、旧暦6月と12月の晦日(みそか)に「大祓(おおはらえ)」という禊(みそぎ)の行事が行われます。これが全国の神社にも広まり、半年に一度、心身の不浄を清める「夏越の祓(なごしのはらえ)」と「年越の祓(としこしのはらえ)」となりました。
京都では6月30日に、三角形に切った白い「ういろう」に、炊いた小豆をのせた「水無月」という和菓子を食べる風習があります。この形は、氷室(冷蔵庫がない時代に宮中で使うための氷を製造・貯蔵していた場所)から切り出した氷を模しており、小豆の赤色には邪気払いの意味が込められています。京都の夏越の祓に欠かせない季節の銘菓です。
6月は、1年の折り返し地点に当たる季節。気温や湿度が高く、夏バテなどの不調が出始める頃でもあります。半年がんばった自分をねぎらい、ここで一息ついてみてはいかがでしょうか。
引用・参考文献
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