Column 316
2025/05/20 18:00
コンピューターの不具合のことを「バグ」をいいますが「バグ」とは「虫」のことです。その語源は1940年代にさかのぼります。ある日、アメリカで開発された初期のコンピューター「Harvard Mark II(ハーバード・マークツー)」が故障しました。その原因は、なんとコンピューター内部に虫が入り込んだことだったのです1)。
それまでも、機械の不具合やレーダーの故障を「バグ」と呼んでいましたが、なぜこの出来事が語源とされているのでしょうか。
Harvard Mark IIに入り込んだ虫は蛾だったのですが、開発プロジェクトの一員であったグレース・ホッパー氏は取り除いた蛾をノートに貼り付けて「初めての実際のバグ発見例」と記録したという逸話が残っています。初期のコンピューターですから熱や光に誘われて蛾が入り込んだのでしょう。
日本文学者のドナルド・キーン氏によれば、日米では虫の好みが異なるのだそうです2)。日本人が好むトンボを、米国人は「目が怖い」と敬遠し、逆に日本人が嫌がる蛾は、米国人の美的感覚をくすぐるようです。蓼(たで)食う虫も好き好きということでしょうか。
そんな蛾の幼虫は蓑虫(ミノムシ)として親しまれています4)。ミノムシは秋に蓑をつくるために、日本の文学界では秋の季語として詠まれます。あの有名な枕草子にもミノムシの一節があります4)。
「蓑虫、いとあはれなり。鬼の産みたりければ、親に似て、これも恐ろしき心あらんとて、、、八月ばかりになれば、ちちよ、ちちよ、とはかなげに鳴く、いみじうあはれなり」
親である蛾は恐ろしいけれど、ミノムシには趣があるとの内容です。
ところで、冬の間、地中にこもっていた虫たちが、暖かくなって地上に出てくる時期を「啓蟄(けいちつ)」といいます。「啓」は「開く」、「蟄」は「虫などが土中に隠れ閉じこもる」という意味です3)。啓蟄は中国生まれの暦・二十四節気の一つであり、春の季語でもあります。2025年の日本における啓蟄は3月5日でした。
機械の中の虫たちは季節に関係なく出てきては、私たちを困らせていますが…
引用・参考文献
1)https://ja.wikipedia.org/wiki/バグ
2)https://www.sankei.com/article/20250409-FSML4SQHNFIGDLQYZO5NQJEAPQ/
3)https://ja.wikipedia.org/wiki/啓蟄
4)https://ja.wikipedia.org/wiki/ミノムシ
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