Column 293
2024/12/10 18:00
中南米に生息するミツユビ・ナマケモノ(以下:ナマケモノ)は名前に違わぬなまけ者です。樹の上から降りてくるのは、3週間に一度のトイレの時だけ。なぜこんなにトイレの回数が少ないのかというと、排泄がナマケモノにとって命懸けの行為だからです。
報告されている死因の半数が、地上に降りた際の肉食動物による捕食とされます。トイレに降りる時には、危険が伴うだけではなく、登るためのエネルギーコストもかかります。ウィスコンシン大学の生物学者パウリ氏は、このナマケモノの排泄行動を研究しました。
ナマケモノは一日のほとんどをジャングルの樹上で、木の葉を食べながら過ごし、めったに移動しません。少ないカロリーの食事で生きていけるように、エネルギーを保存しておく必要があり、なまけているというより、燃費を良くしているといえます。
あまり動かないナマケモノの被毛にはカビや藻が生えています。 その藻と昆虫のガ(蛾)との共生関係によって、ナマケモノはのんびりとした生活を続けられることがわかってきました。
パウリ氏は、ナマケモノの糞の調査を行ったところ、蛾が、まだホカホカの糞の山に卵を産み付け、生まれた幼虫は糞を食べて成長するという事実が明らかになったのです。 幼虫は羽化して蛾になると、ナマケモノの被毛に入り込み、その中で交尾します。
ナマケモノの被毛に付く蛾の数、被毛上にある窒素とリンの濃度、藻の量も調べました。すると蛾は、何らかの形でナマケモノの被毛に窒素分を与え、それが藻の成長につながっている可能性がでてきました。
藻はとても栄養価が高く、脂質に富んでいます。ナマケモノは自分の毛づくろいをする時、同時に藻を摂取します。こうして、わざわざ地上まで降りて蛾の卵に餌を提供した苦労は、蛾が窒素分と藻をもたらし、ナマケモノの食料として還元されるというわけです。
樹上で動きののろいナマケモノが、何を考え何をしているか分かりませんが、人知の及ばないところで自然は活動しているのですね。
引用・参考文献
1)https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/8791/
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