Column 283
2024/10/01 18:00
1968年~1972年にかけてアメリカの動物行動学者ジョン B. カルフーンは『UNIVERSE 25』というネズミを使った実験を行いました。都市計画のシミュレーションとして、繁殖に必要な十分なスペースと無限の食糧を与えられたら、ネズミはどのような社会を作り出すのかという実験です。
最初に8匹(4組)のネズミが用意され、水も食料もふんだんに与えられる、ネズミにとって必要なものはすべて整ったユートピアが作られました。8匹は環境に慣れて縄張りを作り、巣作りを始め、104日後から出産を開始しました。個体数は順調に増え続け、315日目、620匹まで増えました。
ところが、この時から縄張りごとに分かれていたネズミたちは、なぜか1か所に集まり始め、決まった巣箱で固まって生活するようになりました。餌場もたくさんあるのに、なぜか同じ時刻に、同じ餌場で、奪い合うように一斉にエサを食べるようになったのです。
そのうち、集団として行動する3分の1のネズミと、テリトリーを持たず繁殖もせず無気力に過ごす3分の2のネズミ(ニートネズミ)に分かれました。ニートネズミはメスに相手にされず、集団行動をするオスに攻撃されるようになりました。また、集団行動をするオスはエサを独占して、エサを食べにくるニートネズミやメスを攻撃するようになったのです。
メスたちは出産してもオスが守ってくれないため、自分たちも攻撃的になっていきます。そして子どもを守るどころか、子どもを攻撃して早期に巣から追い出し始めます。そして、この育児放棄されたネズミたちは、交配も子育ても行わず、ただ食べて毛づくろいをするだけの生活に入りました。
そうして、560日後に出産が停止します。最大2200匹まで増えたネズミたちは猛スピードで減り始め、実験開始から920日後、最後のオスが死んで『UNIVERSE 25』のネズミたちは全滅しました。
1950年に25億人だった世界の人口は70年後に3倍の80億人を突破しました。ところが先進国では人口減少が現実味を帯びてきています。
もし、この『UNIVERSE 25』が人間にも当てはまるのなら、現在の人口減少は生物としての必然ということになるのかも知れません。
引用・参考文献
1)https://web-mu.jp/history/6250/
©️ Nozaki Women's Clinic Allrights Reserved.
Designed by HARUNO design.