Column 266
2024/06/04 18:00
現代の日本人約3200人分のゲノム(全遺伝情報)の分析から、日本人の祖先は3つの系統に分けられる可能性が高いことが分かったと、理化学研究所のチームがアメリカの科学誌に発表しました1)。
今までは、「日本人の祖先は縄文人と弥生人の2系統」という仮説でしたが、新しく3つの系統に分けられる可能性が高いとのことです。従来の仮説では、日本人は狩猟民族である縄文人と弥生時代に大陸から移住した渡来人が混血した人種とされていました。
研究チームは、多くの人の血液や遺伝情報を集めて保存しているバイオバンク・ジャパンのデータを活用して、北海道、東北、関東、中部、関西、九州、沖縄の医療機関に登録された日本人のゲノムの特徴を分析しました。
その結果、日本人の祖先は主に、沖縄に多い「縄文系」、関西に多く古代中国の黄河周辺にいた漢民族に近い「関西系」、東北に多く様々な要素が混ざっていて詳しい由来が分からない「東北系」の3つの系統に分けられることが分かりました。
縄文系の遺伝情報の割合は、沖縄に次いで東北で多く、関西では最も低かったそうです。東北系は沖縄・宮古島の古代日本人や4~5世紀頃の朝鮮半島の人に近く、かつて東北に住んでいた「蝦夷(えみし)」と呼ばれる人々とも関連している可能性があるようです。
東北の言語は地理的に離れた島根県の出雲地方の言語と似ていると言われています。松本清張の小説「砂の器」はこの事実から構想が得られたのかもしれません2)。「砂の器」は東京でおこった殺人事件から始まります。捜査員は犯人の言葉が東北弁(ズーズー弁)だったとの情報を得ます。
そのため刑事は東北地方まで捜査を広げますが手掛かりは得られません。するとその方言が出雲地方の言葉だと分かり、これを端緒に事件は解決へと向かうことになります。出雲も東北と同じズーズー弁だったことが「砂の器」のキーポイントとなっています。
遠く離れた土地の言葉が似ている。それは日本人の祖先がどのように移動していったかを知るキーポイントです。
引用・参考文献
1)産経新聞 2024年4月18日11版22面記事
2)https://ameblo.jp/atom2460/entry-12607622221.html
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