Column 23
2018/12/12 18:00
子宮頸がんはヒトパピローマウイルス(HPV:Human Papilloma Virus)による感染が原因で起こることが明らかになっています。HPVは私たちの日常においてありふれたウイルスで、手すりやドアノブなどあらゆる場所にいます。HPVには150種類以上もの型があり、その内、子宮頸がんの原因となるHPVの代表は「16型」と「18型」です。20〜30代の女性に発見されるHPVの80〜90%を占めているのが、この「16型」と「18型」です。1)
現在、ヒトのがんのうちでワクチンによる予防が可能なものは、子宮頸がんだけです。実際に、アメリカやオーストラリアでは、若年女性に対する子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)の接種によって、HPV感染率が減少しています。2)さらに、アメリカ癌学会では、少女に加えて少年へのワクチン接種も推奨しています。3)
一方、我が国では、副作用のためHPVワクチン接種が推奨されていないというのが現状です。世界保健機関(WHO:World Health Organization)は、HPVワクチンの安全性に関する声明の中で、「日本では、専門家によるワクチンの副作用検討委員会が、因果関係はないとの結論を出したにもかかわらず、接種を推奨しない政治判断は安全で効果あるワクチンの接種を妨げて、真の被害をもたらす」と警告を発しています。4)
WHO声明の中で、HPVワクチン接種中断を批判されたのは日本のみで、このように一国だけを名指しで批判するのは異例のことだそうです。5)諸外国で子宮頸がんに罹患する女性が減少していく中で、日本だけで子宮頸がんが増えていくことは避けなければなりません。ワクチン接種の再開を望むと同時に、子宮頸がんの検診率も上げていくことが重要です。
■引用・参考文献
1) http://www.shikyukeigan-yobo.jp/cause.xhtml、2018年12月12日アクセス
2) http://jsog.umin.ac.jp/66/handout/4_2Dr.fujii.pdf、2018年12月12日アクセス
3)http://amrit-lab.com/c/AM632.html、2018年12月12日アクセス
4)https://www.who.int/vaccine_safety/committee/GACVS_HPV_statement_17Dec2015.pdf、2018年12月12日アクセス
5)http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5771、2018年12月12日アクセス
追記
2021年11月26日、厚生労働省健康局長通知6)により、8年ぶりにヒトパピローマウイルス(HPV)感染症に係る定期予防接種の積極的な勧奨が再開しました。 遅くとも2022年度からは、定期接種対象者への個別通知による接種勧奨が行われています。
■引用・参考文献
6) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/notifications.html
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