灰色のサイ

更年期

更年期外来

　コラム90で「ブラックスワン」という言葉を紹介しました。ブラックスワンが舞い降りることを、金融業界では「めったに起こらないが大きな影響がある現象を指す」とされています。これと対をなす言葉として、国際金融市場で使われるのが「灰色のサイ」です1）。

　「灰色のサイ」とは、金融市場において、大きな問題を引き起こすと考えられるにも関わらず、軽視されてしまいがちな材料を指します1）。草原のサイは体が大きくて反応も遅く、ふだんはおとなしいのですが、一旦暴走し始めると誰も手をつけられなくなり、爆発的な破壊力をもつことに由来しています。

　少子高齢化や不良債権などは、直近ではそれほど問題視されていなくても、いずれ拡大して表面化すれば、株価暴落を引き起こしかねない潜在的リスクです。

2013年の世界経済フォーラム（ダボス会議）で、米国の政策アナリストのウッカー氏が提唱して、注目されるようになりました1）

　「灰色のサイ」は婦人科疾患にもあります。更年期障害が灰色のサイです。誰でも通過する人生の一時期が更年期ですが、その時期に起こる様々な症状が更年期障害です。命には関わらないからと軽視していると、将来起こりうる重大な病気のサインを示し始めるのが更年期障害です。

　更年期には、ほてりや発汗、気分の落込み、皮膚や粘膜の乾燥などの症状が始まりますが、実は骨密度の減少が始まり、コレステロールも上がり始めます。将来、骨粗しょう症や動脈硬化となり、骨折や心筋梗塞を引き起こします。女性にとって爆発的な破壊力となる病気の兆しは、更年期障害が起こるころに始まるのです。

　福岡市天神にある野崎ウイメンズクリニックでは、更年期障害の治療だけではなく、更年期以降に上昇する病気のリスクを見据えた予防的治療も行っています。骨粗しょう症、動脈硬化などは、灰色のサイがおとなしいうちに外来で予防されてはいかがですか。

診療案内：更年期外来

引用
1) https://www.smbcnikko.co.jp/terms/japan/ha/J0768.html

野崎雅裕野崎ウイメンズクリニック院長: 福岡市天神の産婦人科、野崎ウイメンズクリニックの院長。女性医学の専門医として、九州大学病院などにおいて、思春期から更年期女性のホルモン療法や不妊治療、漢方療法、月経痛や女性のこころとからだの悩みに関する医療に長年従事。ホルモン療法やピルの使い方、月経痛の対処法や月経移動の説明にも精通した熟練スタッフとともに、すべての患者様へあたたかいケアを行っている。