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Column 17

2018/12/10 18:01

華麗なる加齢

アンチエイジングとは、加齢による身体の機能的な衰え(老化)を可能な限り小さくすること、言い換えると、「いつまでも若々しく」ありたいとの願いを叶えることです。老化の原因には、遺伝子の変異、細胞機能の低下、酸化ストレスの増加、免疫力の低下、ホルモンレベルの低下、炎症の慢性化などが共通要因として考えられています。1)アンチエイジングには、機能性食品を用いた栄養指導や、筋力・有酸素トレーニングなどの運動指導、意欲向上や心身ストレスからの解放を目指した精神療法、各種ホルモン補充といった薬物療法が有効といわれています。1)その一つに、女性ホルモンであるエストロゲンを補充するホルモン補充療法(HRT)があるわけです。

ところで、アンチエイジング(=Anti-Aging)の “aging” とは、ageの動詞形(=年をとる)+ ingという動名詞ですから、「歳を重ねる」や「老齢化」を意味します。すなわち、アンチエイジングとは、エイジングをAnti(=反対)とする考え方なのです。しかし、エイジングはいけないことなのでしょうか。加齢は生物であるならば平等に起こる自然現象です。したがって、急激に老化(=墜落)するのでは無く、健やかに美しく年を重ねましょう(=軟着陸)、という考え方こそがアンチエイジングの真意であり、タイトルの “華麗なる加齢” とは、まさに読んで字の如しなのです。この言葉は、私が敬愛する東京歯科大学の高松 潔先生の名言です。ちなみに余談ですが、食べ物のカレーに含まれる様々なスパイスには、発汗作用や脂肪燃焼が期待でき、美容効果が高いと言われています。カレーは「食べる漢方薬」と言われていますが、カレー大国のインドには美女が多いとされているのも、“カレー” が “華麗なる加齢” に一役買っている所以なのでしょうか。

日本でのHRTは欧米に遅れること数十年ですが、現在でも、HRTが必要とされる女性への普及率は数%しかありません。日本では更年期障害、特にホットフラッシュ、発汗、気分不良、動悸やめまいなどにHRTが行われていますが、皮膚や粘膜の乾燥、老化に対する治療や予防におけるHRTの普及率は、依然として低いのが現状です。

先日、北米閉経学会2018サンディエゴに参加してきましたが、更年期障害の治療におけるHRTは、欧米ではもはや当たり前のこととして位置づけられています。北米閉経学会での多くの話題は、その大半が “腟” のアンチエイジングがテーマのものでした。企業の展示ブースも、そのほとんどが “腟” の健康に関するものでした。日本が遅れているのか、欧米が進みすぎているのか、彼我の差を感じました。

■引用・参考文
1)「アンチエイジング」『ヤクルト中央研究所』、https://institute.yakult.co.jp/dictionary/word_23.php、2018年12月10日アクセス

この記事を書いた人

野崎 雅裕
野崎 雅裕野崎ウイメンズクリニック 院長
福岡市天神の産婦人科、野崎ウイメンズクリニックの院長。女性医学の専門医として、九州大学病院などにおいて、思春期から更年期女性のホルモン療法や不妊治療、漢方療法、月経痛や女性のこころとからだの悩みに関する医療に長年従事。ホルモン療法やピルの使い方、月経痛の対処法や月経移動の説明にも精通した熟練スタッフとともに、すべての患者様へあたたかいケアを行っている。
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