Column 321
2025/07/01 18:00
睡眠をさそう眠気の正体はいまだに明らかになっていないそうです。睡眠学の世界的権威である筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構の柳沢正史氏が、現時点でわかっている眠気の正体や睡眠の実態などについて解説しています1)。
脳内には、睡眠を促進する神経細胞グループと覚醒させる神経細胞グループが存在し、シーソーのような関係で睡眠と覚醒を切り替えています。柳沢氏は覚醒神経細胞であるオレキシン産生細胞を発見し、中枢性過眠症の一つであるナルコレプシーがオレキシン欠乏であることを明らかにしました。現在、オレキシン受容体拮抗薬は不眠症治療薬として実際に臨床で使われています。
昼間に眠そうな人を見かけることは日本人にとってはごく当たり前のことですが、昼間の眠気は健常ではなく異常で、欧米の人からは体調不良とみなされるようです。経済的に豊かな国では睡眠時間は長い傾向にあり、日本人も60年前は平均睡眠時間を8時間13分も確保できていましたが、現在では平均睡眠時間が1時間も減少しているそうです。この原因は、日本人の睡眠時間の確保に対する優先順位の低さが影響している可能性があり、就寝時間を優先する意識が強い欧米諸国の人々と睡眠の重要性が相反するのだといいます。
6時間睡眠を10日間続けるとわれわれの活動レベルはどうなるのかという研究では、「徹夜と同じ程度のパフォーマンス低下が認められ、感情制御が効かなくなり利他的行為の抑制などの問題点が生じる。睡眠時間のみならず、不規則な睡眠などの質の低下でも、循環器疾患の増加、認知症リスクの上昇が報告されている。重症の睡眠時無呼吸症候群を放置した場合には20%が12年以内に致命的な心血管疾患を発症する」と指摘されています。
また、柳沢氏は睡眠脳波測定により、自覚している睡眠時間や睡眠の質は当てにならないことも明らかにしました。充分に寝ていると言っている人でも45%は無自覚な睡眠不足で、不眠を訴える人の66%は客観的に健やかに眠れていました。そして、自分の睡眠の質に満足している人の40%に睡眠時無呼吸の疑いが見られたそうです。
さらに、柳沢氏は「寝る子は育つ。寝ない大人は横に育つ」と言っています。睡眠不足の人は、食欲増進ホルモンのグレリンが増え、太りやすい傾向があるためです2)。
引用・参考文献
1)https://www.carenet.com/news/general/carenet/60817
2)https://www.karadacare-navi.com/life/27/
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