Column 285
2024/10/15 18:00
1959年、ロシアの生物学者ベリャーエフは、イヌがなぜ家畜化されたのかを解明するために、友好的および攻撃的なキツネを作る交配実験を開始しました。彼は、イエイヌはオオカミの子孫であると考えていましたが、両者の解剖学的、生理学的、行動的な違いは、まだ分かっていませんでした。
ベリャーエフは、その鍵はイヌの従順さにあると考えていました。彼は、白いまだら模様、巻いた尾、たれ耳、小さな頭骨など、家畜化された動物に共通する体の特徴は、人間に対して従順になった結果として現れたものという仮説を立てました。
彼は、人間に友好的な個体同士を交配させることによって、キツネを家畜化できるのではないかと考えました。数千年という時間をかけてオオカミがイヌになったプロセスを、人工的に模倣してみようというわけです。アカギツネの集団を育てて研究を行いました。
人間に友好的な個体同士を交配させて生まれたアカギツネは、人間とのつながりを持ちたがるようになっただけでなく、白いまだら模様や巻いた尾、たれ耳など、家畜化された動物の特徴を持つに至ったのです。仮説の正しさが証明されました。
2018年に発表された研究成果によると、米・イリノイ大学の生物学者クケコヴァ氏らは、交配によって生まれたアカギツネのうち攻撃的な個体、友好的な個体、そして比較用に普通のアカギツネをそれぞれ10匹ずつ選んで遺伝子を解読し、アカギツネのゲノムを完全に解読しました。
彼らはゲノム領域の103カ所で違いを発見し、さらに、友好的か攻撃的かという行動には、SorCS1と呼ばれる遺伝子が関与していることを特定しました。SorCS1は人間の自閉症やアルツハイマー病と関連があることで知られており、社会的行動にどのように影響するのかを理解する手がかりになると彼らは考えています。
友好的か攻撃的かという違いは遺伝子配列の違いから生じているのです。
引用・参考文献
1)https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/18/080800356/
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