ヘルスケアコラム
2025/02/01
骨盤底筋群は、女性の骨盤付近にハンモック状にぶら下がる複数の筋肉を示す総称です。このコラムでは、もうお馴染みの存在になっているでしょうか?①排泄をコントロールする②臓器や背骨を支える③性機能といった働きがあることを、骨盤底筋ケア編#1で説明しました。併せてエクササイズ法もお伝えしましたが「いまいち正しくできているか分からない…」という方もいらっしゃるかもしれませんね。実は、骨盤底筋群をうまく働かせるためには、3つのコツがあります。今回はその1つ目「柔軟性」がテーマです。
骨盤底筋群が浅層・中間層・深層の3層に分かれていることは、骨盤底筋ケア編#1でお伝えしました。この筋肉が硬くなってしまっていることが、うまく収縮できない原因になっている場合があります。このタイプの方は案外多くみられます。骨盤底筋群も収縮ばかりを練習すれば良いのではなく、柔軟性を確保することがとても大切です。
緊張して肩がこわばった経験はありませんか?人は緊張すると交感神経が優位になり、筋肉が常に収縮した状態になることから、そのような感覚を覚えることがあります。縮こまったままの筋肉は筋力を発揮しにくくなるため、あまり良いこととはいえません。いつも気忙しく交感神経が上がりっぱなしの方は、もしかしたら骨盤底筋群が硬くなっているかもしれません。たまには、ふうっと息を吐いて休む時間も取りましょう。
自然分娩での出産時、なかなか赤ちゃんが出てこないために会陰切開をすることや会陰裂傷が起こることがあります。切開や裂傷が起こった場所を縫合すると、後にその部分が瘢痕化(=はんこんか)して硬くなります。会陰部には骨盤底筋群のうちのいくつかの筋肉が付着しているため、この硬化によって骨盤底筋群全体の動きが低下することがあるのです。ます。
骨盤底筋群は骨盤を下から見た時に恥骨・坐骨・尾骨に付着してダイヤモンド状(菱形)に繋がっています。骨盤前側の三角形の部分は、恥骨と坐骨に囲まれており、かつ恥骨から坐骨までは骨でしっかりと守られています。一方、後側は坐骨と尾骨以外は靭帯のみの構成です。こうした構造上の理由から、骨盤を後ろに倒して背中を丸くする姿勢を続けていると、骨盤底筋群後方の筋肉が収縮したままになり、硬くなってしまうことがあります。
それでは、硬くなった筋肉を柔らかくし、なめらかな動きを取り戻すにはどうしたら良いのでしょうか?答えはもちろん「毎日少しづつ動かす」。手脚の筋肉を鍛えるのと同じで、骨盤底筋群も準備運動やストレッチをしてからトレーニングすると効果が表れやすいです。続いては、トレーニングの前に実践してほしい柔軟性アップの方法をお伝えしていきます。
★ボールを使用するとその感触で筋肉の位置を意識しやすいため、収縮のイメージがしずらい方は、まずこの方法にチャレンジすることをおすすめします。
直径20cm前後(手のひらサイズ)のゴムボールを用意します。ピラティスなどで膝に挟む時に使用するような柔らかいボールが最適です。椅子に座っても、あぐらや正座になっても良いので一番座りやすい座位姿勢になります。ボールを骨盤底筋群の下に置いて、骨盤の底(ボール)に向けて空気を入れていくような意識をしてみます。からだの内側から骨盤底筋群をストレッチするような感覚です。息を吐く時は、ボールの上に体重を預けるイメージでリラックスしましょう。これを3分間実施します。ボールを外して同じ姿勢で座ると、ストレッチ前よりも骨盤底筋群が床に柔らかく接地している感覚が得られると思います。
★仰向けで脚を開く姿勢は、脚の重さが骨盤底筋群に対して程よい負荷を与えてくれます。しっかり柔軟性を高めたい方におすすめの方法です。
仰向けに寝ます。両脚を開いて天井に向け、赤ちゃんが寝転がっているような姿勢になります。骨盤底筋群を天井に向けるようなイメージです。その状態で、骨盤の底に向けて空気を入れていくような意識をしてみます。からだの内側から骨盤底筋群をストレッチするような感覚です。息を吐く時は全身リラックスしましょう。ゆっくり4呼吸で吸い、4呼吸で息を吐くを10回繰り返します。
今回お伝えした方法を実践した後に、骨盤底筋群の収縮を意識してみてください。おしっこを我慢する時のような、お尻の穴を閉めて内側にキュッと引き上げるようなイメージです。収縮のしやすさが変わっていたら、骨盤底筋群の柔軟性がアップしたということです。十分な柔軟性を得られたら、次のステップとして前回のコラムでご紹介した収縮のトレーニングにもチャレンジしてみましょう!
1.Kathe Wallance.産後リハにおける腰部・骨盤へのアプローチ.丸善出版;2017.
2.Kari Bo,Bary Berghmans,Siv Morkved.et al.エビデンスに基づく骨盤底の理学療法-科学と臨床をつなぐ-原著第2版.医歯薬出版;2017.
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