ヘルスケアコラム
2025/09/01
40代を過ぎた頃から、「なんとなく体がだるい」「気分が落ち込みやすい」「眠れない」「肩がこる」など、ちょっとした不調が気になる方も多いのではないでしょうか。
このような症状は「更年期」によく見られます。ホルモン分泌のバランスが崩れることで、自律神経の乱れやからだの機能低下が起こり、心身にさまざまな影響が出るのです。
近年では、ホルモン補充療法(HRT)などの現代医学による治療法が進歩していますが、鍼灸や漢方といった伝統的な治療法への注目度も高まっている印象があります。
そこで今回は、更年期の症状にやさしく寄り添う東洋医学視点でのケアについてお伝えします。ぜひ、お悩みを解消するヒントとしてお役立てください。
更年期とは、閉経を挟む約10年間(45~55歳頃)にかけて訪れる、女性のライフステージのひとつです。前回のコラムでは、この時期の「ゆらぎ」を和らげるセルフケアの方法をご紹介しました。女性ホルモン(エストロゲン)の減少により現れる「ゆらぎ」の症状には、以下のようなものがあります。
「今日はつらいけれど、昨日は平気だった」というように、症状に波があるのも特徴です。周囲の人につらさを理解してもらいにくく、孤独を感じやすいため、精神的な不調が重なることもあるので注意が必要です。
東洋医学でも、更年期はからだの土台が不安定になることで不調が出やすくなる時期と伝えられています。加齢・生殖・成長・老化にまつわる臓腑「腎(じん)」のエネルギー「腎精(じんせい)」が不足するためです。
また、人体は「気(エネルギー)」「血(けつ:栄養)」「水(すい:体液)」の3要素からなり、このバランスごとで異なる体質を持つとされます。それぞれの体質によって不調の出方が異なりますので、詳しく見ていきましょう。
腎陰虚(じんいんきょ)
タイプ
肝陽上亢(かんようじょうこう)
タイプ
気逆(きぎゃく)
タイプ
症状の背景にある体質や体内バランスを重視して治療方針を考えることが東洋医学の基本です。「症状」ではなく「体質」を見るとされ、同じ症状が出ている場合でも、腎陰虚・肝陽上亢・気逆などのタイプごとに治療法が異なります。
治療の代表的なものが漢方薬です。漢方薬は、複数の生薬の相乗効果によって、からだ全体のバランス(気・血・水、陰陽)を整え、不調を根本から改善してくれます。
以下は、更年期の不調に対してよく使われる漢方薬の例です。
冷えや疲れ、貧血ぎみで体力がない方に。むくみ・めまいにも有効です。
イライラ、不安、不眠などの精神的症状を伴う場合に適します。
肩こりや頭痛、生理不順がある方に。血行改善の作用があります。
下腹部の冷え、手足のほてり、口の渇きなどのある方に適します。
胃腸虚弱でめまいやふらつき、頭の重さを感じる方におすすめです。
これらの処方は保険適用の医療機関のほか、薬局や漢方専門家による個別相談でも取り扱われています。自己判断ではなく、医師・薬剤師・登録販売者に相談のうえ、体質と症状に合ったものを選ぶようにしましょう。
漢方薬に並ぶ、日常に取り入れやすい東洋医学に基づくセルフケアとして「ツボ押し」と「養生=生活習慣のコントロール法」があります。
「三陰交(さんいんこう)」や「関元(かんげん)」などのツボを刺激することで、自律神経やホルモンバランスを整える効果が期待できます。実際に、鍼灸によって更年期症状が軽減したとの報告例もあります(1。
更年期の症状を改善したい時の「養生」では、以下の3つを大切にしましょう。
更年期の症状をやわらげ、快適な日常生活を取り戻すために、東洋医学が役立つ可能性は十分にあります。「年齢的に仕方ない」「我慢するしかない」と思わず、ご自身に合った方法を探してみてください。
漢方薬にチャレンジする場合には、あらかじめ不調が現れるタイミングや状況などをよく観察しておき、相談の際に伝えることをおすすめします。最適な処方には、体質や体内バランスの見立てが重要となるためです。
もしお悩みがなかなか改善しない場合や、いつもと違う強い症状がある場合には、早めに婦人科を受診しましょう。健康の維持には、セルフケアと専門家による適切なアドバイスが欠かせません。福岡市中央区天神にある野崎ウイメンズクリニックさんでは、経験豊富な先生が丁寧に相談に乗ってくれます。ぜひ、気軽に足を運んでみてください!
引用・参考文献
1)Lee B,et al.“Effects of acupuncture on menopausal hot flashes: a multicenter randomized clinical trial.” Menopause.2009;16(4):716–723.
2)Elavsky S.“Physical activity, menopause, and quality of life: the role of affect and self-worth across time.”Menopause.2009;16(2):265–271.
Freeman EW,et al.“Symptoms associated with menopausal transition and their relationship to hormonal changes.”J Clin Endocrinol Metab.2007;92(3):837–842.
Takayama S,et al.“Treatment of menopausal symptoms with Kampo medicine: a review.”Obstet Gynecol Surv.2014;69(11):732–740.
日本女性医学学会.「女性の健康とホルモン」.
日本東洋医学会編.「漢方医学ハンドブック」.
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