ヘルスケアコラム
2024/10/01
年齢を重ねるにつれて、これといった原因もないのに「疲れやすくなってきた」「気持ちが安定しない」などの症状が出るようになっていませんか?もしかしたらそれは、更年期に伴う症状かもしれません。
更年期を迎える40~50代は、社会における立ち位置や家庭環境、そして心身にも変化がある時期です。こうした変化に対応するだけでも、からだには大きな負担がかかります。そんな時期だからこそ、自分自身と向き合う積極的なセルフケアをはじめてみてはいかがでしょうか?
更年期は、閉経前の5年間と閉経後の5年間を併せた10年間をさします。この時期に現れるさまざまな症状の中で、これといった病気がないのに起こる症状を「更年期症状」と呼び、これらの症状が日常生活に支障をきたす状態を「更年期障害」と言います。
主な原因は、卵巣機能の低下と言われています。卵巣機能が低下することで女性ホルモンの分泌が揺らいだ状態となり、そこに加齢に伴う身体的変化、社会的な立ち位置の変化、それらによる心理的な不安定さなどが複合的に影響し合い、症状が現れます。
血管運動症状:のぼせ(ホットフラッシュ)、発汗など
精神症状:抑うつ、イライラ、不安感など
身体症状:眩暈、疲労感、頭痛、腰痛、関節痛、肩こりなど
その他にも、痺れなどの痛みに関連する知覚異常、全身倦怠感、動悸、不眠などがみられることもあります。これらの症状に対して、生活の中でどのようなことに気をつけ、セルフケアを行なえば良いのでしょうか?
①姿勢を整える
姿勢が悪いと呼吸が浅くなり、自律神経も乱れやすくなります。日頃から姿勢を整えるよう意識しましょう。
座る姿勢:椅子に浅く腰掛け、坐骨というお尻の骨(座った際に座面にあたる左右の骨)をしっかりと座面に向かって伸ばすように意識します。一方、つむじは天井に伸びるイメージで、坐骨とつむじで引っ張り合うように座ります。その際、膝の間とくるぶしの間はこぶし1個分くらいの幅をキープします。膝の間に空のペットボトルを挟んでおくとキープしやすいでしょう。
立つ姿勢:足の裏の4点である親指の付け根、小指の付け根、踵の付け根(内側・外側)をしっかりと大地に向かって伸ばします。一方、つむじは天井に伸びるイメージで、足の裏の4点とつむじで引っ張り合う意識で立ちます。
例えば、ジムやピラティスに通ったり好きな習い事を始めたりするなど、新しいことにチャレンジする時は、積極的に頑張れるこの時期にスタートすると良いでしょう。
②呼吸法を取り入れる
心身が緊張すると呼吸が浅くなり、自律神経が乱れて症状の悪化につながる可能性があります。ゆっくり大きな呼吸を行うことで自律神経を整えましょう。座った姿勢でできる2つの呼吸法をご紹介します。
肋骨に呼吸を入れる方法:軽く背筋を伸ばし、肋骨を横に広げるように息を吸います。次に、広げた分だけ肋骨がとじるイメージで息を吐きます。これを5回行います。
お腹に呼吸を入れる方法:軽く背筋を伸ばし、お腹の上に手を置きます。その手に空気を送るように息を吸います。次に、お臍が背中に近づくイメージで息を吐きます。これを5回行います。
①背骨の柔軟性向上エクササイズ
更年期症状に影響を与える自律神経は背骨から出ているため、背骨の柔軟性を高めることが大切です。
座ってできる方法:背筋を伸ばし、左手を座面について、右手を横から大きく広げて体を左に倒します。右の肋骨からウエストがストレッチされるイメージで大きく息を吸います。次に、右手を座面について、左手を横から大きく広げて体を右に倒します。左の肋骨からウエストがストレッチされるイメージで大きく息を吸います。これを左右3回ずつ行います。
寝てできる方法:仰向けに寝た姿勢で膝を立てます。その膝を右に倒して体を捻ります。その際に左肩ができるだけ床から離れないように意識します。次に、膝を左に倒して体を捻ります。その際に右肩ができるだけ床から離れないように意識します。これを左右3回ずつ行います。
②筋力増強エクササイズ
女性ホルモンの低下とともに筋力も低下することがあります。また、更年期におこる肩こりや腰痛などを予防するためにも、少し負荷のある運動を心がけましょう。
スクワット運動:足を肩幅より広く開きます。お尻を突き出すように腰を落としてスクワットを行います。できるだけゆっくり動くことを心がけましょう。これを10回行います。
踵あげ運動:足をこぶし幅に開きます。お尻の穴をキュッと閉めて、そのままつむじが天井に向かうように踵をアップします。ふくらはぎに力が入っていればOKです。これを10回行います。
腹筋運動:背筋を伸ばして椅子に腰掛けます。背中をまっすぐにしたまま膝をおへその高さまでUPします。10秒カウントしたら足を下ろします。できるだけ背中が丸くならないように意識して行いましょう。これを10回行います。
③有酸素運動
朝の太陽を浴びながら気持ちの良いリズムで30~40分ほどウォーキングを行いましょう。心身をリラックスさせるセロトニンというホルモンが分泌され、リフレッシュできます。ウォーキングの他に自転車や水泳など、ご自身の好きな有酸素運動を取り入れていただくことも良いでしょう。
私たちのからだは、24時間周期で体温や血圧、ホルモンの分泌量などが変化しており、そのリズムを「サーカディアンリズム」と言います。これが乱れると、心身に不調が現れることがあります。正しいリズムを保つには、昼と夜とでメリハリのある生活を心がけることが基本となります。よって、朝は太陽を浴びながら気持ちよく散歩し、夜はスマホなどの強い光を浴びすぎないように気をつけましょう。暗くなると体内時計を調整するメラトニンというホルモンが分泌され、眠りにつきやすくなるので、夜はお部屋の中の灯りも徐々に暗くしていくことをオススメします。
ご自身の心地よい温度でお風呂をいれ、好きな入浴剤(バスソルトやアロマオイルなど)を楽しみながらリラックスしましょう。心身の緊張がお湯に溶けていくようなイメージをすると上手く力が抜け、自律神経も整いやすくなります。
更年期症状に対するセルフケア方法は、いかがだったでしょうか。症状を和らげたり、予防したりするためには、意識的なリラックスの時間や運動を習慣づけることがポイントになります。無理のない範囲で、普段の生活の中でできることから、ぜひ取り入れてみてください。
1. 日本産婦人科学会:産科婦人科用語集・用語解説集改定第4版.日本産婦人科学会編,日本産科婦人科学会事務局,東京,2018.
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3.医療情報科学研究所.病気がみえるvol.9-婦人科・乳腺外科第3版:メディックメディア;2015.
4.Daley A, Stokes-Lampard H, Thomas A, et al : Exercise for vasomotor menopausal symptoms.,Cochrane Database of Systematic Reviews 2014, 11(28), CD006108.
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