Column 50
2020/03/15 18:00
私の学位論文は卵管の運動に関する研究ですが1)、卵管はヒトの手術で切除された卵管を実験に用いていました。そのため、論文には「ヘルシンキ宣言」を遵守して研究を行った旨の記述があります。ヘルシンキ宣言とは一体何なのでしょうか。
ヘルシンキ宣言は、ナチスの人体実験の反省より生じたニュルンベルク綱領(1947年)を受けて、1964年6月、フィンランドの首都ヘルシンキで開かれた世界医師会第18回総会で採択されました2)。医学研究者が自らを規制する為に採択された人体実験に対する倫理規範で、正式名称は、「人間を対象とする医学研究の倫理的原則」です。
その後、時代の影響を受け何度か修正・追加が加えられ、2000年には、ヒトゲノム計画に関して、エディンバラでの世界医師会総会で改定されています3)。日本では、全ての大学医学部、医科大学、および主要な研究機関に倫理審査委員会が自主的に設置されています。
ヘルシンキ宣言の重要な基本原則は次の項目に集約されます。「患者・被験者福利の尊重」「本人の自発的・自由意思による参加」「インフォームド・コンセント取得の必要」「倫理審査委員会の存在」「常識的な医学研究であること」以上5項目です。また、宣言の対象が単にヒトだけではなく、ヒト由来の臓器・組織・細胞・遺伝子、さらには診療情報まで含むこと、および宣言の対象者が医学研究にかかわるすべての人々であることとされています3)。
■引用・参考文献
1)M.Nozaki and Y.Ito ;American Journal of Physiology 251;R1126-R1136, 1986.
2)http://www.med.or.jp/wma/helsinki.html
3)https://ja.wikipedia.org/wiki/ヘルシンキ宣言
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