Column 336
2026/05/26 18:00

しばらくお休みしていましたが、2ヶ月ぶりのコラムです。
オランダのクルーズ船MVホンディウス号でのハンタウイルス感染症が話題になっています。乗員乗客の大半はスペイン領カナリア諸島で下船し、イギリスやアメリカへ搬送されて隔離、経過観察中とのことです。
あのコロナ・パンデミックが始まった頃のダイヤモンド・プリンセス号の悪夢が蘇ります。ハンタウイルスに関する興味深い記事がありましたので紹介します。
ホンディウス号での最初の感染者は、アルゼンチンでのバード・ウォッチング時にネズミなどの齧歯類に触れて感染したのではないかと言われています。遠いアルゼンチンでの出来事であることや、日本国内での感染ではないことから、今ひとつ実感が湧きませんが、実は日本とハンタウイルスとの関わりは古いようです。
日本は1932年、中国東北部に満洲国を建国しました。間もなくして、1938年に旧ソ連国境付近の孫呉県で流行性出血熱「孫呉熱」が大流行し、旧日本軍兵士を中心に約1万人の患者が発生し、3000人の死者が出たと報告されています。
当時、孫呉熱はウイルス感染症の可能性が指摘されましたが、ウイルス同定には至りませんでした。後年、韓国でハンタウイルスの1種であるハンターンウイルスが同定され、過去の臨床記録、疫学記録、病理所見の再検討が行われた結果、孫呉熱はハンタウイルス感染症の1種と分類されるようになりました。
また、過去に遡ってハンタウイルス感染症と認定されたのが、1960年代に大阪・梅田周辺で起こった通称「梅田熱」です。約10年間にわたって断続的に報告された患者数は119例でうち2例が死亡しています。
さらに1970~84年にかけて、ハンタウイルスに汚染された実験ラットを通じたハンタウイルス感染症が全国の研究施設で報告されました。患者のほぼ全員に共通していたのが、ラットの飼育やケージ交換、ラットを用いた動物実験に関わっていたことです。
現在、半世紀にわたって日本ではハンタウイルス感染症の報告はありません。が、1996~98年にかけて全国の18検疫所が行った調査によると、港湾地域で捕獲したネズミのハンタウイルス抗体陽性率は12.9%でした。また、2000~2003年に北海道大学のグループが北海道、本州、四国、九州で行ったネズミの捕獲調査では、ネズミの種類別の抗体陽性率はアカネズミが1.0%、エゾヤチネズミが3.6%、ドブネズミが1.1%、クマネズミが6.7%でした。流行していないだけで、実は日本国内にもハンタウイルスは存在するのです。
ネズミの排せつ物による汚染の可能性がある場所には近づかない、どうしても避けられない場合はマスクや手袋を着用するなどの対策が必要でしょう。
コロナ禍が去った今、続いてハンタ禍が起らないことを祈ります。
引用・参考文
https://www.carenet.com/hihyofri/313.html?keiro=comtopcenter

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