Column 31
2018/12/16 20:10
ヒトの正常な生殖とは、精子と卵子の受精が卵管(膨大部)内で成立し、この受精卵が正常にかつ順調に細胞分裂して子宮内へと移動し、最適な子宮内膜に着床して初めて「妊娠」が成立します。これらいずれの過程が阻害されても妊娠は成立しません。原則的に、精子と卵子があってこその「妊娠」成立となります。
ところが、ヒトのiPS細胞を利用し、卵子のもとになる卵原細胞を培養だけで作ることに世界で初めて成功したと、京都大学の斎藤通紀教授(細胞生物学)らのグループが米科学誌サイエンス電子版に発表しました。今回の成果について斎藤教授は、「ヒトの始原生殖細胞が(卵子のもとになる卵原細胞などの)生殖細胞になることがはっきり証明された」と説明。卵原細胞の遺伝子解析が可能になることで、将来的には不妊症の原因解明など、生殖医療の発展に役立つということです。1)
京都大学ではこの他に、ヒトES細胞とヒトiPS細胞から生殖細胞への分化誘導法の開発とその方法の最適化を行い、次の段階の精原細胞や卵原細胞に分化する培養条件を見出すという具合に研究を進める予定で、作製した配偶子(精子と卵子)の受精は行いません、と公表しています。2)
子どもを望むカップルの10組に1組は不妊症といわれています。つまり10%は不妊症で治療を受けることになります。比較的容易に赤ちゃんに恵まれるカップルもいれば、何年も不妊治療を受けてついに断念するカップルもあります。このようなカップルにiPS細胞研究の成果が実用化される日も遠い未来ではないと思われます。
■引用・参考文献
1)https://www.sankei.com/west/news/180921/wst1809210007-n1.html、2018年12月16日アクセス
2)https://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/faq/faq_ips.html、2018年12月16日アクセス
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